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ソフト開発の落とし穴 2008年10月31日

経済のグローバル化
ソフト開発は人件費の安い外国でとお考えの企業も多いことと思います。
何も商売だけでなく自社のシステム開発を外国企業に発注することもあろうかと思います。

経理処理と消費税
外国企業へソフト開発を依頼した外注費は、売上と対応する場合は外注費で処理しますが、自社使用の場合は無形資産となります。
当然外国での役務の提供でありますから消費税は不課税取引となり、課税仕入れとはなりません。

著作権はどっち
当社が依頼して作ってもらったソフトであるから、当然著作権も当社にあると考えがちですが、著作権は本来下請であったとしても、その作成者にあります。
そのため、単なる外注契約では著作権は外注先にあることとなります。
ですから著作権の譲渡契約を結んでおかないと、当社の依頼ソフトを勝手に他社に販売されてしまう可能性があります。

源泉所得税は20%
もう一つ注意しなければならないのは支払時です。
外国からの著作権の譲渡には20%(国によっては租税条約で15%~免税まであるが、概ね10%が多い)の源泉所得税の徴収義務が支払者に発生します。
したがって支払時には源泉所得税を控除して支払う必要があります。

これら一連のことを当初の契約時にハッキリさせておかないと後でトラブルの元となりますのでご留意ください。


著作権は通常作成者個人の権利とされております。唯一の例外として著作権法に以下の条文があります。


(職務上作成する著作物の著作者)
第15条  法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
2  法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。

ですから外注先に依頼したソフトのプログラムは、外注先の従業員が作成した場合には、その外注先の法人に著作権があります。

留意点:上記は国内法であり外国の場合は更に条約が優先します。

=以下所得税法=
(国内源泉所得)
第161条
7  国内において業務を行う者から受ける次に掲げる使用料又は対価で当該業務に係るもの
イ 工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるものの使用料又はその譲渡による対価
ロ 著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)の使用料又はその譲渡による対価
ハ 機械、装置その他政令で定める用具の使用料

(源泉徴収義務)
第212条  非居住者に対し国内において第161条第1号の2から第12号まで(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得(その非居住者が第164条第一1項第4号(国内に恒久的施設を有しない非居住者)に掲げる者である場合には第161条第1号の3から第12号までに掲げるものに限るものとし、政令で定めるものを除く。)の支払をする者又は外国法人に対し~同様の国内源泉所得(中略)~の支払をする者は、その支払の際、これらの国内源泉所得について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない。
(徴収税額)
第213条  前条第一項の規定により徴収すべき所得税の額は、次の各号の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
1  前条第1項に規定する国内源泉所得(次号及び第3号に掲げるものを除く。) その金額(次に掲げる国内源泉所得については、それぞれ次に定める金額)に100分の20の税率を乗じて計算した金額

最良の方法としては、外注先への契約金額を著作権の譲渡部分と、役務の提供部分に分け、著作権の譲渡金額を少額にすることで源泉徴収金額を減少させることができます。

因みに国内の著作権譲渡の取引には源泉徴収義務はありません。




引当金って何? 2008年10月30日

引当金とは
「将来の特定の費用又は損失で、その発生が当期以前の事象に起因し、発生する可能性が高く、かつ、その金額が合理的に見積もることができる場合には、当期負担分を費用又は損失として、当期の費用又は損失として、引き当てなければならない」
と中小企業の会計指針では言っております。
主旨としては、正しい期間損益の把握と、将来のリスクの回避の為です。

代表的な例は
1.退職給与引当金
退職金規定に従って合理的な金額を見積計上します。
2.賞与引当金
賞与対象期間が当期に属し、支払が翌期になるような場合に引き当てます。
3.貸倒引当金
将来の貸倒れに備えて引き当てます。
4.製品保証引当金
製品の保証をしているメーカー等が、今期の製品の売上に対して、翌期以降に保証に要する費用や損失を見積もって計上します。
5.返品調整引当金
保証と返品の違いで、製品保証と同様の考えです。

法人税法上は会計上は、将来のリスクに対し様々な引当を要求されますが、税務上は「貸倒引当金」と「返品調整引当金」の2つしか損金算入は認めておりません。
税務上は原則、債務の確定していないものを損金としては認めません。
上記2つの引当金も特別に認めているだけですので、従来認めていた「賞与引当金」や「退職給与引当金」のように、いつ認めないと言ってもおかしくありません。

実務上は会計指針に従い将来のリスクに備え引当金は計上し、税務上は自己否認すると言うのが理想ですが、多くの中小零細企業は税務基準で引き当てているのが現状です。




融資を受ける際の事前準備 2008年10月29日

国民生活金融公庫は、事業規模が小さく、担保となる不動産も持っていない小企業にとっては身近な存在でした。
初めて公庫から資金を借入れる際には、保証人制度など若干面倒な手続きもありますが、次回からは(返済が順調であることを前提に)借換えの手続きをするだけで融資が継続できました。
その公庫も、平成20年10月1日から「株式会社日本政策金融公庫」として再出発します。
この政策金融公庫は、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫及び國際協力銀行が統合し、民間の金融機関となったわけです。
国民公庫が担っている「小口金融の専門店」としての融資機能は、そのまま新公庫に承継されるということで、従来の業務と大幅に変更になることはないようです。

(1)第三者保証人等を不要とする融資
公庫では、次の条件を満たす貸出先には第三者保証、保証協会の保証、不動産担保の提供がなくても融資の利用はできるとしています。
具体的には
①税務申告を2期以上行なっていること
②原則として所得税等を完納していること
です。

但し、金利については、若干のプレミアムがつきます。
(2)融資を受ける際の事前準備
 あたり前のことですが、ただ漠然とお金が足りないから借りるのではなく、何のためにいくら必要なのか、さらに、返済条件をどうするのか明確にすることが重要です。
例えば、買掛金の決済なのか、事業転換資金なのか、機械等の設備資金なのか、その上で、返済の原資として売上げを見込んでいる場合、期待通りに達成できるか等々、これらの諸条件を資金計画の中で整理することが大切です。
その上で、有利な公的制度融資の利用を検討します。

(3)公的融資制度の内容。
公的な融資制度には、都道府県や各区が独自で設けたものと国の制度があります。
都道府県や区の制度は保証協会の保証を受けて利用します。
国の制度には、「マル経融資」あり、商工会議所の推薦にもとづき国民生活金融公庫が融資する制度で、担保や保証人、保証協会の保証が不要で低利の融資が受けられます。




上場株式等の譲渡益課税 2008年10月28日

平成20年度の税制改正で、個人投資家の上場株式等に関わる税制は、平成21年から変更になり、平成22年まで軽減措置があり、平成23年から新しい税制になります。
そこで、上場株式等の譲渡益課税について、現行の税制を踏まえ、今後の改正についての主要な内容を確認しておきましょう。

(1)平成20年度の譲渡益課税
平成20年までの上場株式等の譲渡益に係る税率は10%(所得税7%、住民税3%)で、
①「源泉徴収あり」の特定口座では申告不要
②一般口座及び「源泉徴収なし」の特定口座では要申告です。
なお
③譲渡損失の3年間繰越控除制度(平成21年以降も同様)
④上場株式等の取得費の特例「みなし取得費」(平成22年まで)は適用できます。

(2)平成21年、22年の譲渡益課税
上場株式等の譲渡益に係る税率は、500万円以下の部分は10%、500万円超の部分は20%(所得税15%、住民税5%)となります。
具体的には、課税対象となる譲渡益が(損益通算後及び繰越損失の控除後)が900万円だった場合、500万円までの部分に税率10%で税額50万円、残り400万円に税率20%で税額80万円、税額合計130万円になります。
なお、特定口座・一般口座等のすべての年間譲渡損益の通算額500万円を超えた場合は、「源泉徴収あり」の特定口座での譲渡分も含めて申告しなければなりません。
つまり、「源泉徴収あり」の特定口座では、譲渡益が500万円以下であれば10%の源泉徴収で申告不要です。
しかし、すべての年間譲渡益が500万円超えると要申告となります。
そこで、この場合の税額計算は、まず、500万円以下の部分に10%、500万円超の部分に20%の税率で計算した税額から、すでに特定口座で源泉徴収されている10%の税額を控除した金額を納付税額として計算するということです。

(3)平成23年の譲渡益課税
上場株式等の譲渡益に係る税率は、20%となります。
なお、「源泉徴収あり」の特定口座(源泉徴収税率20%)での譲渡分は、譲渡益金額にかかわらず申告不要を選択することができます。




上場株式等の配当課税 2008年10月27日

平成20年度の税制改正で、上場株式等の譲渡益課税が改正されました。
これにつじつまを合わせるように、上場株式等の配当課税についても改正が行われました。
適用は平成21年以降からです。
そこで、上場株式等の配当課税について、現行の税制を踏まえ、今後の改正について主要な内容を確認しておきましょう。

(1)平成20年の配当課税
平成20年までの上場株式等の配当等については、10%(所得税7%、住民税3%)の税率で源泉徴収され、確定申告は不要です。
もちろん、申告不要でも確定申告をすることができますが、申告した場合は、総合課税となり所得の多寡により税率5%~40%の累進税率が適用され、住民税も10%の課税があります(配当控除の適用はあります)。
配当収入の計上時期は、配当の権利を取得した日や配当を受け取った日ではなく、効力発生の日(一般的には配当支払開始日と同日)となります。
なお、発行済株式総数の5%以上保有の大口個人株主における配当ついては、総合課税として確定申告が必要です。

(2)平成21年、22年の配当課税
平成21年以降から①申告不要または②申告分離課税または③総合課税のどちらも選択できます。
上場株式等の配当等について、一定の計算による年間合計額が100万円を超えると申告しなければなりません。
申告する場合、申告分離課税の場合は、100万円以下の部分10%、100万円を超える部分20%(所得税15%、住民税5%)の税率が適用され、総合課税を選択した場合は、平成20年と同様の課税関係になります。なお、源泉徴収税率は引続き10%です。
100万円の計算方法は、原則として、年間の配当合計額が「1万円を超える銘柄」だけで計算します。
例えば、A銘柄年間6千円、B銘柄年間5万円、C銘柄年間1万円、D銘柄年間50万円、E銘柄年間60万円だとしますと、配当の年間合計金額は、B、D、E銘柄の合計額115万円となります。

(3)平成23年の配当課税
源泉徴収税率は20%になりますが、確定申告せずに済ませることができます。
確定申告をした場合は、20%の申告分離課税と累進税率の総合課税の選択となります。
配当税制は、今後も流動的です。
平成21年度税制改正から目が離せません。




サブプライム問題 2008年10月24日

バケツの底が抜けた
2007年8月に端を発したサブプライムローンの金融危機は収まる気配どころか、世界経済をどん底に陥れようとしています。
2008年9月にはアメリカの証券会社リーマンブラザーズの破綻によって全世界に動揺が走り、株価が大幅に下がっています。
また、新興国においても投資家が高リスク商品から資金を引き上げることで大規模な資金流失に陥っています。

サブプライム問題
今回の金融危機は大きく分けて二つの問題があります。
まず一つは、金融機関が損失を確定することができないことです。
米国の住宅ローンはノンリコースローンといって住宅購入者が住宅ローンを返せない場合、住宅を売却すれば、たとえ担保割れでローンが残っていても返さなくていい契約になっています。
ローンの未返済部分は債権の購入者である投資家の損失という事になります。
また、債権の証券化を行うことによって、どの投資家が損失を負っているのかが、全くわからないことになっています。
まず不良債権処理を行う上での大前提として損失を確定することが挙げられますが、それができない状態に陥っているのが実情です。

二つめは金融機関が利益をかさ上げするために借入を極度に行ったことです。
元の資産に対して30倍から100倍で運用していたといわれています。
利益が出ているときはいいのですが、損失が出てくると、値段に構わず現金化しなければ破綻してしまうので、今回の大暴落につながっていると思われます。

ピンチはチャンス?
今回の世界同時株安を受けてネット証券の口座開設が大幅に増えているそうです。

 




節目の年齢で手続きをお忘れなく 2008年10月23日

社会保険・給与計算時、到達年齢による確認事項
社会保険・労働保険には、年齢により新たに保険料を控除したり、控除しなくなったりという、節目の年齢があります。
これを覚えておくと、給与計算時に漏れることなく処理することができます。

満40歳 
健康保険の介護保険料の控除を始める年齢です。通常誕生月の翌月の給与より控除を開始します。

満60歳 
最近は定年の延長をする会社が増えてきましたが、一般的には満60歳を定年とし、退職か再雇用をする企業が多いと思います。
再雇用の場合は定年前に給与額や勤務日数、仕事の内容等について話し合われる必要があるでしょう。
働きながら年金を受給したい場合は、給与額により在職老齢年金が支給となります。

満64歳 
その年の4月1日現在に満64歳に到達していた方は、その4月より本人、会社とも雇用保険料負担がなくなり、控除の必要がなくなります。
又、失業給付は65歳以降に退職した場合は「高年齢求職者給付金」として一時金支給となりますが、64歳のうちに退職した時に受ける基本手当の6割程度となってしまいます。

満65歳 
65歳以降も社会保険に加入していた場合は、給与額に関係なく厚生年金の定額部分は全額支給されるようになります。
報酬比例部分の在職老齢年金の上限も上がり支給額も上がります。
介護保険料は年金からの控除となるので会社での控除は終了します。

満70歳 
70歳以降も社会保険に加入していた場合でも、65歳以降と同じく在職老齢年金の制度は継続されます。
但し、厚生年金保険料の給与からの控除は終了します。
なお、「厚生年金保険70歳以上被用者算定基礎・月額変更・賞与支払届」を必要な時期に提出しなければなりません。




短期なのに長期? 2008年10月22日

所有期間5年以内は短期のはずが……
所得税法では、資産の譲渡による所得で所有期間が5年以内のものについては、短期譲渡所得として課税されますが、所有期間が5年以内であるにもかかわらず、長期譲渡所得として課税されるものがあります。

ホームページを売却したら3年前から、休日に趣味でコミュニティーサイトを運営しているAさん。
このホームページをB社から譲ってほしいと申し出を受け売却した場合、どのように課税されるでしょうか?

ホームページは著作物
①著作権とは、著作物を独占的に支配して利益を受ける排他的な権利で、譲渡、利用許諾及び質権等の対象となる。
②著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸・学術・美術又は音楽の範囲に属する。
③著作物は人間の精神的な創作活動の所産であるが、思想又は感情そのものは著作物ではなく、その創作的な表現形式が著作物として保護の対象となる。

ホームページについては、その表現に創作性があれば著作物として保護されるものとされています。

著作権の譲渡は長期譲渡所得に該当
所有期間が5年以内でも、自分が研究して取得した特許権や実用新案権などの工業所有権、自分が著作した著作権などは、総合課税の長期譲渡所得として課税されます。
譲渡益があるときは、特別控除50万円を差引いた残額の1/2の金額が課税対象となります。
ただし、事業として行っている場合は、事業所得となります。




債務超過と欠損金額 2008年10月21日

(1)債務超過とは、
一般的に、会社が保有する財産のすべてを処分しても、借金などの負債(債務)を完全には返済できない状態を言います。
この状態は、企業としての信用を損ない、事業継続に支障をきたす恐れがあります。

(2)資本の欠損とは
これは、会社の純資産額が資本金と準備金の合計額を下回るに状態に至った時をいい、債務超過の一歩手前を言います。
この用語は、旧商法の時代にはそれなりに意味をもっていました。
すなわち、同法の下では、最低資本金制度があり、かつ、建前ではありますが資本維持・不変の原則が堅持されていたからです。
しかし、会社法では、最低資本金制度が撤廃され、資本金の額に下限はなく、極端にいえばゼロでもよいと解釈されています。
それゆえ、この「資本の欠損」なる用語はあまり意味をもたなくなったと言えます。

(3)欠損金(額)とは
欠損金(額)という用語は、法人税法上の用語であり、各事業年度の「損金の額」(費用)が「益金の額」(収益)を超える場合におけるその超える部分の額をいい、会計基準でいう当期損失に該当します。
ただ、当期損失に税法独自の計算要素が加わりますのでイコールではありません。
欠損金額(当期損失)も累積すると繰越欠損金(未処理損失)となります。
この繰越欠損金(未処理損失)が増え続け、株主資本を上回ると先ほどの債務超過の状態に陥ります。
なお、繰越欠損金は、翌事業年度に利益がでたときは、利益から控除され法人税の納税が減額されます。
この控除期間は、昨年までは5年間でしたが、平成20年3月決算期から前6期分、21年3月決算期以後は前7期分となります。
但し、会社の法人税の申告が青色であることが前提です。

1.平成16年度の税制改正において、青色欠損金の繰越控除の期間を5年間から7年間に延長する改正が行なわれました。
但し、経過措置として、改正後の規定は、平成13年4月1日以降に開始した事業年度において発生した欠損金について適用するものとされています
(改正所法等附則13条 平成16年度改正税法のすべて P168~168参照)

2.同時に、純損失等の金額の更正期間も5年から7年に延期されました。
また、増額更正期間も3年から5年になり、3月決算法人で平成20年3月期について税務調査があった場合、平成16年3月期まで5年間遡って更正処分がなされます。

3.欠損金額
各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額が当該事業年度の益金の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう(法人税法2条19号)。




どちらの扶養親族になるの 2008年10月20日

所得税においては、所得者が2人以上いる場合に、これらの者の控除対象扶養親族の取扱については、勤務先に提出する「給与所得者の扶養控除等申告書」に記載されたところによることとされています。
両親が所得者である場合には、お互い話し合って、長男は夫の扶養親族に、長女は妻の扶養親族にするか、あるいは、両親の所得の多寡によって家計全体で最も節税となる扶養親族の帰属を選択するかは、その両親の自由です。(控除対象扶養親族の要件を満たしていることが前提です。)
このように、所得者が2人以上いる場合、同一人をそれぞれの所得者の扶養親族として重複して申告しない限り、どの所得者の扶養親族としても差し支えありません。

(1)別世帯の2人以上の所得者の場合
同じ世帯であれば、だれの扶養親族にするかお互い話し合って決められますが、別世帯だとこの辺がなかなか大変です。
例えば、両親が離婚した場合、元夫が養育費を支払っている限り、その子は、元夫の扶養親族にあたります。
そこで、離婚した両親がそれぞれ勤務先に子を控除対象扶養親族として申告した場合、この重複申告は認められません。
ではいったい、いかなる基準で1人の所得者の控除対象扶養親族と判定するかが問題になります。

(2)税務署の判断
このような、離婚した両親からいずれも自己を扶養親族とする「扶養控除等申告書」の提出があったケースで、税務署は「合計所得金額が大きい元夫の扶養親族に該当する」と判断し、元妻の扶養親族を認めませんでした。
この処分に納得のいかない元妻は異議申し立てをしました。

(3)審判所の判断
元妻の請求を受けた審判所は、次のように判断しました。
「所得税法では、いずれの扶養親族とするかが定められない場合は合計所得金額の多寡で判定するが、本件の場合はそのような事例ではなく、この場合、先に扶養控除等申告書を提出した方の居住者(元妻)の扶養親族とすべきである。」
事実によれば、元妻は平成17年12月に、元夫は平成18年1月にそれぞれ勤務先に扶養控除等申告書を提出していました。
家族関係も複雑になりました。
いつ書類を収受したか、会社にとっても管理責任が問われる時代です。


1.TAINS(平成19-12-27非公開
採決FO-1-307)
(離婚後の扶養控除等申告書提出の効果)
離婚後、婚姻費用及び養育費を負担している父と、日常の起居を共にしている母とが、それぞれの勤務先に長女を扶養親族とする扶養控除等申告書を提出していた場合において、それぞれの勤務先の回答により、請求人の方が元夫よりも先に提出しているものと認め、請求人が長女に係る扶養控除の適用を受けることができると判断された事例(平成18年分所得税の更正処分・全部取消し・平19-12-27裁決)【情報公開法第9条第1項による開示情報】

〔裁決の要旨〕
1 請求人は、夫との離婚後、給与収入と毎月元夫から送金される婚姻費用及び養育費とを合わせて生計を立てていたことからすると、平成18年においては、長女は元夫と別居中であるとはいえ、元夫と同一の生活共同体に属して日常生活の資を共通にしているものと認められることから、長女は請求人だけでなく、元夫とも生計を一にするものに該当する。
2 そうすると、平成18年分において、長女は、所得税法上請求人及び元夫双方の扶養親族に該当する。
3 請求人及び元夫は、いずれも長女を扶養親族として、平成18年分扶養控除等申告書に記載し、それぞれの勤務先に提出していることが認められるところ、請求人の扶養控除等申告書は、勤務先代表者及び請求人の答述等のとおり、平成17年12月中に勤務先に提出されたことが認められ、一方、元夫の扶養控除等申告書はその勤務先の回答書において、同申告書の「給与の支払者受付印」欄にスタンプ押印された、平成18年1月12日に提出されていることから、請求人の方が元夫よりも先に勤務先に提出しているものと認められる。
4 したがって、所得税法第84条第2項及び施行令第219条第2項第1号の規定により、請求人の扶養親族となることから、請求人が長女に係る扶養控除の適用を受けることができる。
5 なお、原処分庁は、施行令第219条第2項第2号の規定により、長女は、平成18年分の合計所得金額が請求人より大きい元夫の扶養親族に該当すると主張するが、同号は、同項第1号の規定によっても、いずれの扶養親族とするかが、定められない場合の規定であり、本件は、同項第1号の規定により判断することとなるため、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
6 以上のことから、本件更正処分は、その全部を取り消すべきである。
 裁決年月日 H19-12-27コード番号 F0-1-307





貿易条件と消費税 2008年10月17日

輸出入取引を行なう事業者にとって、貿易条件に関する知識は欠かせません。
この貿易条件に関して、国際取引慣習として普遍的に使用されている標準的取引条件の解釈に関する規則があります。
これが、インターナショナル、コマーシャル、タームズで、略して「インコタームズ」と呼ばれています。

(1)インコタームズの役割
その内容は、売主と買主の間の売買契約における物品引渡しの場所、売主から買主への危険移転の時点、運送の手配と運賃の支払、保険の手配と保険料の支払、通関手続きと関税の支払、費用分担に関する基本条件を「売主の義務」と「買主の義務」に分けて定めています。

(2)主要な取引条件
インコタームズには、13の条件の定めがありますが、通常、「FOB」、「DFR」、「CIF」の3条件を熟知しておけば足りると言われています。
これらいずれの条件も、輸出者の貨物に対する危険負担は、輸出地の港で船舶に貨物を積み込むまで(空港内の施設に搬入)です。

(3)消費税の輸出免税との関係
したがって、これら3条件のもとでは、消費税法でいう資産の譲渡は「国内において行なわれた」といえますので、当然ですが、一定の書類を具備すれれば「輸出免税」の適用(消費税の免除)を受けることができます。
しかし、上記3条件以外の貿易条件、例えば、船が輸入国に到着し、関税を払って、さらに物品を輸入国の工場まで運んだ段階で危険負担の責任が買主に移転するケース(この貿易条件をDDPと言う)では、消費税法上で言う資産の譲渡は「国外」ということになり、輸出免税の適用が受けられないことになります。

(4)消費税法の特例規定
貿易条件によって、輸出免税の適用が受けられないようでは、貿易は機能しません。
そこで、消費税法では、輸出等で国外取引に該当するものについては、輸出として証明されたものにつき「課税資産の譲渡等の対価に係る輸出取引等」に該当するものとみなして輸出免税の適用を認めています。
但し、これは、仕入税額控除の規定の特例ですので、納税義務等の有無を判定する基準期間における課税売上には算入されません。

1.インコタームズの概要
インコタームズ(Incoterms) は、International Commercial Terms の前の二つの単語のはじめの二字、すなわち 'In' と 'Co' とを Termsに冠して略称としたもので、正式の名称は、「取引条件の解釈に関する国際規則(International Rules for the Interpretation of Trade Terms)」といいます。  
 詳しくは 日本ジェトロのHPで。
http://www.jetro.go.jp/world/japan/qa/import_09/04C-070304

2.消費税法
(非課税資産の輸出等を行った場合の仕入れに係る消費税額の控除の特例)
第31条  事業者が国内において第6条第1項の規定により消費税を課さないこととされる資産の譲渡等(以下この項において「非課税資産の譲渡等」という。)のうち第7条第1項各号に掲げる資産の譲渡等(以下この項及び次項において「輸出取引等」という。)に該当するものを行った場合において、当該非課税資産の譲渡等が輸出取引等に該当するものであることにつき、財務省令で定めるところにより証明がされたときは、当該非課税資産の譲渡等のうち当該証明がされたものは、課税資産の譲渡等に係る輸出取引等に該当するものとみなして、前条の規定を適用する。
2  事業者が、国内以外の地域における資産の譲渡等又は自己の使用のため、資産を輸出した場合において、当該資産が輸出されたことにつき財務省令で定めるところにより証明がされたときは、当該資産の輸出のうち当該証明がされたものは、課税資産の譲渡等に係る輸出取引等に該当するものとみなして、前条の規定を適用する。
3  前二項の場合における前条第2項に規定する課税売上割合の計算の方法その他同条の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。




家族に優しい税制を! 2008年10月16日

義務付けの意味は?
民法では、直系血族及び兄弟姉妹に相互の扶養義務を課しており、場合によってはその範囲は3親等内の血族にまで拡張される、としています。
こういう相互の助け合いがあるべき姿だからこの規定がある、と読みたいところですが、厄介者を国や自治体に押し付けないで、親族で面倒みろ、という姿勢がこの規定を置いているように見えます。
なぜなら、あるべき姿なら、それを助長する方向での制度的支援があるはずですが、制度はその逆ばかりだからです。

親族に支払う必要経費
所得税法では、親族間で支払った経費は、特別な手続をした場合を除き、原則として必要経費として認めていません。
家族は助け合うのが当たり前だろう、という考えが、それを抑制する方向に作用する逆の規定になっているのです。

療養上の世話の対価
療養上の世話を受けるため家政婦などに支払う謝礼は、医療費控除の対象となります。
しかし、親族に対して支払う謝礼は、医療費控除の対象とはなりません。

年金制度中心社会の本質
老後生活費も、介護も、生活扶助も本来は家族の助け合いを基本に置くべきことなのだと思います。
しかし、諸制度は脱家族を促進する役割をしていて、社会はぐんぐんそういう方向に進化しています。
老人になったら、自分の育てた子供に面倒を見てもらうのではなく、他人の子供の支払う年金保険料で老後の年金生活、動けなくなってからの介護も他人の負担する介護保険で、といった制度になっています。
自分のリスクをカバーしてくれるのが、家族・親族であるからこそ、人類は自分の子供を作り、子育ての苦労を負担し、親族とのつながりを大切にしてきたのに、現代の社会はそれを超克しようとしてきました。

自然を克服しすぎないこと
社会制度のあり方が人工的すぎる、と少子化や子育て放棄という現象を生みます。
他人への支払いは優遇し、家族への支払いは無視するような制度も、ここまで家族制度が危機に瀕してくると、危機を助長する役割を果たすことになってしまいます。




どっちなの?最高裁 2008年10月15日

動物の生存権
野良犬や野良猫を殺傷したり虐待すると動物愛護法により懲役や罰金の刑罰を受けることになります。
動物の生存権を尊重する視点が基礎にあるからです。
しかし、逆説的ながら、ペットの場合には動物であっても生存権的な視点のない「物」としてまず把握されるようで、刑法上は器物、民法上は生命のある動産、つまり電車に置き忘れると遺失物、殺害すれば器物損壊罪、所有権の客体でもあり、売買の対象にもなります。

ペット葬祭業の対価はお布施?
宗教法人が行うペット葬祭業が収益事業に当たるかどうかが争われた事件で、最高裁はこの今年9月12日、上告を棄却し、法人税を課した税務署の処分を認めました。
ペット葬祭業は,外形的に見ると,請負業,倉庫業及び物品販売業であり、かつこれらの事業に付随して行われる形式としての宗教的儀式サービス提供業であり、その対価にはお布施などの喜捨等の性格はない、としています。
動物愛護法以前の「物」との視点を基調においた考え方を色濃くにじませているようにみえます。

ペットの供養塔は宗教施設か?
ところが、一方では、寺院が行うペット等の遺骨の保管施設は宗教施設に当たるとの最高裁判決を今年7月17日に出してもいます。
こちらでの言い分は、「一般的に人が供養される場合と動物が供養される場合とで社会的な評価が異なることは否定できないところながら、動物の供養について、客観的にみて、その宗教性について社会的な認知が得られているものということができる」というものです。
動物の遺骨の保管行為が、民間業者のそれと類似しているから、固定資産税の非課税の優遇措置を受けられない、との東京都の主張は否定されました。

議論は煮詰まっていない
これらの最高裁判決は、それぞれの事案の特殊性を考慮した結果の標準偏差内の判断なのか、ダブルスタンダードの判断なのか、疑問を提供するものになっています。
税制の議論の前に、動物との付き合い方の摂理をまだ十分に議論し尽くしていないようにも思います。




ストックオプション型退職金 2008年10月14日

6割が役員退職慰労金廃止、上場企業
日本経済新聞社が東証1部に上場する1578社(金融を除く)を対象に調べたところによると、役員退職慰労金の廃止をした企業は8月末までの累計で909社に上った、と9月14日朝刊1面トップ記事にありました。
役員退職慰労金の算定方法が必ずしも説得性のある明確さを備えていないものが多いようで、株主から批判が高まっているほか、不祥事などで不払いになるリスクを避けたい役員側の意向もあり、この流れが加速されているようです。

ストックオプション付与が代替策
この記事では、一方で3分の1の企業がストックオプション(株式購入権)を導入するなど、成果重視の業績連動報酬制度への移行が進んでおり、年功色の強かった日本企業の役員報酬が様変わりしつつある、と報じています。
同様の記事が今年の1月7日にもあり、そこでは、役員退職慰労金ストックオプション導入企業は2007年末で158社と書かれていますので、10分の1から3分の1へと3.3倍の増加ぶりです。

1円ストックオプションが主流
ストックオプション権利行使時の払込価額を1株1円と設定すると、付与された者は会社解散や上場廃止にでもならない限り、権利行使による取得株式の売却により必ず現金を手にできます。
業績貢献に応じて定期的に新株引受権を付与して累積しておき、取締役を退任した時に権利を行使できるようにする制度ならば、長期に頑張って株価が上昇すればそれに応じて収入が増えるということにもなります。

非適格なれど退職所得税制適格
1円ストックオプションは、いわゆる税制適格には該当しませんが、行使条件が退職金の現物支給に類似する要件を備えていれば退職所得扱いとなり、課税上有利です。
なお、新株予約権付与は登記事項で、また、会計処理的には、権利付与時に給与費用の計上をするのですが、税務上これは無視され、権利付与時の課税はありません。




不断の努力義務 2008年10月10日

国民の不断努力義務
憲法は12条で、国民に不断の努力で自由や権利を保持すべきことを要求しています。
自由や権利はタナボタで与えられるものではない、と言っているわけです。

不断の努力とは
憲法で刑罰法規の不遡及を定めていることに絡む事件がありました。
官報で公布され即施行となった新規定を、その「犯行」時刻の早朝にその地域の誰もがまだ読むことができなくても、東京の官報販売所で購入可能になっていれば、法律は公布施行されたことになるから、遡及適用に当たらず、有罪との最高裁判決となりました。
法の不知はこれを許さずとの原則が、法の有無を含めて、絶対的な擬制の上に成り立っていることを明らかにした過酷な判決です。
しかし、この裁判の結果、刑罰法規について、公布即施行とするものはその後なくなった、と言われています。

不断の努力がなかった税法分野
税は法律によらなければ課せられないことに憲法でなっているのに、従来は国民の反発がなかったので、遡及立法し放題でした。
最近は、何ケ月もの先に遡及適用する立法を憲法違反とする訴訟が持ち上がって、やっと不断の努力が現出してきました。
裁判が結果として国民に味方してくれなかったとしても、こういう訴訟が、国会をして遡及立法を意識的に避けるようにさせ、国政を変えるはずです。

細部に宿る
2008年の改正税法は4月30日16時44分衆議院での再可決により法律となりました。
この後、法律の公布のために法律に法律番号が付けられ(法律第23号ほか)主任の国務大臣の署名及び内閣総理大臣が連署し、閣議決定を経た上天皇に上奏され、御名御璽を賜ったのち官報に掲載されることによって公布は行われます。
出された官報は平成20年4月30日付(特別号外第9号)でした。
この日の官報販売所の5時半閉館に間に合うことだったのでしょうか?疑問です。
間に合ったとしても、午前零時からの適用は明らかに遡及立法です。
こういう細部のところに、行政と立法の側の憲法無視体質の露呈を見ることができます。




お金も、働きがいも、欲しい

定年を前にして、まだまだ働きたいと思う一方で、自分の年金額を調べてみたら、満額受給できる年齢までは、どうしても働かなければと思われた方もいらっしゃる事でしょう。

厚生年金額の内訳は、報酬比例部分+定額部分+加給年金で構成されています。
昭和22年4月2日から24年4月1日迄の間に生まれた方は、平成19年4月から24年3月の間に満60歳を迎えますが、これらの方々の満額支給年齢は64歳で、それまでは報酬比例部分のみの支給となります。
そこで元気なうちは働きたい、年金が満額支給になるまで働きたいという場合、どのような働きかたが本人にとって有効でしょうか。

60歳定年後の上手な働き方
厚生年金の加入期間の長かった方ならば、比較的年金額が多いと思います。そのような方は週20時間から30時間未満で働くという方法が考えられます。この場合は社会保険には加入はせず、雇用保険のみ加入することとなります。
働いていても年金は在職停止はなく全額支給され、雇用保険からは「高年齢雇用継続給付」が受けられます。(但し、平成22年4月以降社会保険加入条件は週20時間勤務の方を対象とする予定となっております。)

退職する場合は64歳のうちに
雇用保険の失業給付は退職時の年齢で給付されます。
65歳になってから退職の場合では、一時金となってしまいます。ですから、65歳前に退職すれば一般の失業給付を受給することができます。
また、厚生年金を受給していても、満65歳からの本来支給の厚生年金を調整減額されることはありません。

以上の方法は本人にとって有利な手段であるとは思いますが、会社との雇用契約があるのですから、自分の希望ばかり言っていられるものではないかもしれません。




外国人留学生を雇用する場合 2008年10月08日

外食企業の実に約77%が外国人を雇用している昨今ですが、給与を支払う際、避けて通れないのが所得税の源泉徴収です。
アルバイト等で外国人留学生を雇用する場合、どこの国から来たかによって、源泉税の取扱いが異なります。

原 則
①国内に住所又は1年以上居所を有する者で、日本国籍を有せず、過去10年以内において国内に住所等を有していた期間の合計が5年以下である者は、日本国内で行ったアルバイトの給与等から税額表により源泉徴収されるほか、これ以外の所得で国内において支払われ、又は海外から送金された所得がある場合は確定申告が必要となります。
②日本国内に住所又は現在まで引き続き1年以上居所を有しない者は、日本国内で行ったアルバイトの給与等から20%源泉徴収されます。
③上記①②に該当しない者は、国内外すべての所得が課税対象とされます。

中国からの留学生は給与の源泉税免除
留学生(学校教育法第1条に規定する学校の児童、生徒又は学生に限ります。)等が受け取る報酬について、アメリカやインドなどとの租税条約では、海外からの送金についてのみ課税が免除されますが、中国との租税条約では、海外からの送金のほか、日本国内で行うアルバイトの給与等も免税とされています。各国との租税条約により内容が異なりますので、注意が必要です。

源泉税の免税措置を受けるためには
給与等の支払者を経由して「租税条約に関する届出書」を支払日の前日までにその給与等の支払者の所轄税務署長に提出することが必要です。

    
所得税法
(定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
3  居住者 国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて一年以上居所を有する個人をいう。
4 非永住者 居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去十年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が五年以下である個人をいう。
5  非居住者 居住者以外の個人をいう。

(納税義務者)
第5条 居住者は、この法律により、所得税を納める義務がある。
2  非居住者は、次に掲げる場合には、この法律により、所得税を納める義務がある。
①  第161条(国内源泉所得)に規定する国内源泉所得(次号において「国内源泉所得」という。)を有するとき(同号に掲げる場合を除く。)。

(課税所得の範囲)
第7条 所得税は、次の各号に掲げる者の区分に応じ当該各号に定める所得について課する。
1  非永住者以外の居住者 すべての所得
2 非永住者 第161条(国内源泉所得)に規定する国内源泉所得(以下この条において「国内源泉所得」という。)及びこれ以外の所得で国内において支払われ、又は国外から送金されたもの
3  非居住者 第164条第1項各号(非居住者に対する課税の方法)に掲げる非居住者の区分に応じそれぞれ同項各号及び同条第2項各号に掲げる国内源泉所得

(国内源泉所得)
第161条 この編において「国内源泉所得」とは、次に掲げるものをいう。
8 次に掲げる給与、報酬又は年金
イ 俸給、給料、賃金、歳費、賞与又はこれらの性質を有する給与その他人的役務の提供に対する報酬のうち、国内において行う勤務その他の人的役務の提供(内国法人の役員として国外において行う勤務その他の政令で定める人的役務の提供を含む。)に基因するもの
日米租税条約
第19条
教育又は訓練を受けることを主たる目的として一方の締約国内に滞在する学生又は事業修習者であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものがその生計、教育又は訓練のために受け取る給付(当該一方の締約国外から支払われる給付に限る。)
については、当該一方の締約国において租税を免除する。この条に規定する租税の免除は、事業修習者については、当該一方の締約国において最初に訓練を開始した日から一年を超えない期間についてのみ適用する。

日印租税条約
第21条
専ら教育又は訓練を受けるため一方の締約国内に滞在する学生又は事業修習者であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものがその生計、教育又は訓練のために受け取る給付については、当該一方の締約国の租税を免除する。ただし、当該給付が当該一方の締約国外から支払われるものである場合に限る。

日中租税協定
第21条
 専ら教育若しくは訓練を受けるため又は特別の技術的経験を習得するため一方の締約国内に滞在する学生、事業修習者又は研修員であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものがその生計、教育又は訓練のために受け取る給付又は所得については、当該一方の締約国の租税を免除する。

※「租税条約に関する届出書」については、「租税条約の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令」第8条を参照してください。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S44/S44F03402011001.html




親族は得?損? 2008年10月07日

民法では、親族の範囲は6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族と定められています。
この親族に該当するかどうかによって、税制上取扱いが異なります。

扶養控除
親族は扶養控除の対象になりますが、内縁関係の配偶者については、配偶者控除の対象になりません。
一方で、同族会社の判定などでは「特殊関係者」として親族同様に扱われていますので、ちょっと不合理な気がします。
また、内縁関係にある相手との間に生まれた子は、未認知である限り親族に該当しないため実子であっても扶養控除の対象になりません。
しかしながら再婚相手の連れ子は、たとえ養子縁組をしていなくても一親等の姻族に該当するため、生計を一にするなどの要件を満たせば、扶養控除の対象になります。

親族に支払う必要経費
所得税法は、親族間で支払った経費は、青色事業専従者給与などを除き、原則として必要経費として認めていません。
それは所得税が個人単位課税を採用していることから、家族に所得を分散することによって超過累進税率の適用を回避することを防止するためと言われています。
弁護士である夫が別の事務所に勤務する妻に支払った報酬を必要経費として認めない、とした最高裁判決があります。

療養上の世話の対価
保健師・看護師等を依頼することができない状況にある場合に、療養上の世話を受けるため家政婦など特に依頼した者に対して支払う謝礼は、医療費控除の対象となります。
しかしながら、親族に対して支払う謝礼は、医療費控除の対象とはなりません。
扶養義務があり、労務の提供の対価の支払を前提としないからとの理由ですが、妥当かどうかは疑問です。




近年の人口動態 2008年10月06日

地域経済は人口動態によって大きく影響を受けている
東京・大阪・名古屋の三大都市圏の近年の人口動態は、“東京増加・大阪減少・名古屋横ばい”の傾向です。
名古屋は製造業の就業者が中心であることに関連してか、男性が微増し、若い女性が微減しています。
それに比べて、東京では、若い女性人口が増加している点が大きな差異となっているようです。

なぜ、東京は増加したのか?
その要因として考えられるのが、東京圏の短大・高専・大学・大学院などの高等機関で学んだ学生が、そのまま東京圏に就業することが挙げられます。
一昔前ならば、卒業後は親元に帰るなどが一般的でした。
しかし今は、女性の社会進出が進み、特に高学歴の女性が、“医療・福祉・教育・コンサルティング”等のサービス業に従事する傾向が多く、その業務領域の受け皿が少ない地元に帰れずに、東京圏が就業先として選択されているのです。

人口動態の変化と経営のマッチング
大手企業に関わらず、中小企業にとっても人口動態は、“市場の変化と社員の確保”に大きな影響を与えます。
自社の地域情報を詳細に分析することによって、戦略を見出すことが極めて重要となります。
三大都市圏でさえ、大きな人口動態ギャップがあるのですから、各地域企業の戦略はその変化への緻密な目を持ってこそ、“人が人に対して人を介して行う経営行為”の個性化が可能となります。
自社の地域的な特徴を活かしたニッチへの深堀や人材確保のヒントなどを人口動態から読み取って見てはいかがでしょうか?




繰延資産の混乱 2008年10月03日

企業会計原則における定義
「繰延資産とは既に対価の支払が完了し又は支払義務が確定し、これに対する役務の提供受けたにもかかわらず、その効果が将来に渡って発現するものと期待される費用を資産として繰り延べたものをいう。」と定義されています。

会計上の繰延資産
会社法の改正を受けて、繰延資産の限定列挙を廃止し、会計慣行に従うとしていますが、当面の措置として創立費・開業費・株式交付費(旧新株発行費)・社債発行費・開発費の5つを上げています。

法人税法の繰延資産
法人税法も、会社法の改正を受けて、限定列挙を、上記5つの繰延資産としましたが、その他にも税法独自の繰延資産を多々設けています。

そこで会計処理の混乱を防ぐため、「中小企業の会計に対する指針」では
①上記5つの繰延資産に旧商法の研究費・社債発行差金については、費用処理を原則とするが、繰延資産として資産計上も認める。
②研究費・開発費は費用処理が望ましい。
③費用処理しなかった税法固有の繰延資産は、長期前払費用等として資産計上する。
以上の会計処理の指針を打ち出しました。

企業会計原則では
前払費用は、「一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。」と定義されております。
同じ企業会計原則で、繰延資産は先の通り「繰延資産とは・・・・これに対する役務の提供受けたにもかかわらず、その効果が・・・・」と定義されております。
それを「中小企業の会計に対する指針」では税法固有の繰延資産は長期前払費用であると言っております。
ここでは明らかに繰延資産と前払費用の混乱が見うけられます。
これでは現場は、混乱するばかりです。

「中小企業の会計に対する指針」
繰延資産
要 点
①創立費、開業費、研究費及び開発費、新株発行費等、社債発行費、社債発行差金は、原則として費用処理する。なお、これらの項目については繰延資産として資産に計上することができる。

②研究費及び開発費のうち、新知識の発見を目的とした計画的な調査及び探求並びに新製品等への研究成果その他の知識の具体化に係る費用は、その発生時に費用処理することが望ましい。

③費用として処理しなかった税法固有の繰延資産は、長期前払費用等として計上する。

3)法人が支出する次に掲げる費用(資産の取得に要した金額及び前払費用を除く。)のうち支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものは、税法固有の繰延資産に該当する。

a)自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
b)資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立退料その他の費用
c)役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
d)製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
e)(a)から(d)までに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用

これに対し税法では、法人税法施行令で
第14条(繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、法人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。

一  創立費(発起人に支払う報酬、設立登記のために支出する登録免許税その他法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきものをいう。)

二  開業費(法人の設立後事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。)

三  開発費(新たな技術若しくは新たな経営組織の採用、資源の開発又は市場の開拓のために特別に支出する費用をいう。)

四  株式交付費(株券等の印刷費、資本金の増加の登記についての登録免許税その他自己の株式(出資を含む。)の交付のために支出する費用をいう。)

五  社債等発行費(社債券等の印刷費その他債券(新株予約権を含む。)の発行のために支出する費用をいう。)

六  前各号に掲げるもののほか、次に掲げる費用で支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶもの
イ 自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
ロ 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用
ハ 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
ニ 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
ホ イからニまでに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用

2  前項に規定する前払費用とは、法人が一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出する費用のうち、その支出する日の属する事業年度終了の日においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。




繰延資産って何? 2008年10月02日

繰延資産とは
貸借対照表には本来実在する財産や負債が表示されることが原則ですが、信用経済が高度に発展し、期間損益(原則1年間)の重要性が増してきたため、期間損益を正しく表示する為に考えられた実在しない資産勘定です。

企業会計原則における定義
「繰延資産とは既に対価の支払が完了し又は支払義務が確定し、これに対する役務の提供受けたにもかかわらず、その効果が将来に渡って発現するものと期待される費用を資産として繰り延べたものをいう。」と定義されております。
繰延資産は将来の期間に影響する特定の費用であって、次期以後の期間に配分して処理するため、経過的に貸借対照表の資産の部に記載された資産をいいます。

会計上の繰延資産
会計上の繰延資産は会社法の改正を受けて、原則限定列挙を廃止し、会計慣行に従うとしていますが、当面の措置として以下の5つを上げています。
①創立費:会社設立に要した費用
②開業費:開業準備の為に要した費用
③株式交付費:新株又は新株予約権の発行の為に要した費用
④社債発行費:社債の発行の為に要した費用
⑤開発費:新技術、新資源の開発、新市場の開拓に要した費用

法人税法の繰延資産
法人税法も、会社法の改正を受けて、限定列挙を、上記5つの繰延資産としましたが、その他にも税法独自の繰延資産を多々設けています。




この年金はいつの所得? 2008年10月01日

所得の帰属年度
所得税法は、一暦年を単位としてその期間ごとに課税所得額を計算し課税することとしています。
そして、その年分の収入金額とは、その年において収入すべき金額によるものとされています。

なぜ収入すべき金額なのか?
現代のように信用取引や特殊な取引が増えると、現金の収受を基準とすることは実態に合わなくなっています。
そのため、一部の事業者や取引を除き、企業会計の発生主義の考え方にならい、現実の収入がなくてもその収入の原因となる権利が確定した場合には、その時点で所得の実現があったものとして、客観的に課税所得を計算する(権利確定主義)こととしています。

老齢厚生年金受給権の発生時期
厚生年金保険法の定める年金給付に係る受給権は、同法の定める受給要件を満たした時点で基本権が発生し、その後支給期日が到来することにより、実際に年金を受け取る権利(支分権)が発生します。
受給権者は、裁定の請求をすればいつでも年金の支給を受けることができる状態になりますから、その支給期日が到来した時点で年金の支給を受ける権利が確定したものとされます。
したがって、一時に支給された場合は、それぞれ本来の支給期日の属する年分の収入金額として課税所得を計算することになります。
このように、法令により定められた支給期日をもって年金の収入すべき時期とし、客観的に所得の帰属年度を確定すれば、課税の公平を図ることができます。

遡及して一括支給を受けたら
年金を受給できないと思っていた妻が、受給できることがわかり裁定請求した結果、過去数年分の年金を一括支給された場合、何をする必要があるでしょうか?
①妻の各年分の確定申告
②夫が配偶者控除等の適用を受けており、妻の所得が38万円を超える年が生じた場合、修正申告等が必要になります。 

所得税法
(収入金額)
第36条
その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。

2 前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。

3 無記名の公社債の利子、無記名株式等の剰余金の配当(第24条第1項(配当所得)に規定する剰余金の配当をいう。)又は無記名の貸付信託、投資信託若しくは特定受益証券発行信託の受益証券に係る収益の分配については、その年分の利子所得の金額又は配当所得の金額の計算上収入金額とすべき金額は、第1項の規定にかかわらず、その年において支払を受けた金額とする。

所得税基本通達
(雑所得の収入金額又は総収入金額の収入すべき時期)
36-14
雑所得の収入金額又は総収入金額の収入すべき時期は、次に掲げる区分に応じそれぞれ次に掲げる日によるものとする。
(1)法第35条第3項《雑所得》に規定する公的年金等
イ 公的年金等の支給の基礎となる法令、契約、規程又は規約(以下この(1)において「法令等」という。)により定められた支給日
ロ 法令等の改正、改訂が既往にさかのぼって実施されたため既往の期間に対応して支払われる新旧公的年金等の差額で、その支給日が定められているものについてはその支給日、その日が定められていないものについてはその改正、改訂の効力が生じた日
(注)裁定、改定等の遅延、誤びゅう等により既往にさかのぼって支払われる公的年金等については、法令等により定められた当該公的年金等の計算の対象とされた期間に係る各々の支給日によることに留意する。
(2) (1)以外のもの
  その収入の態様に応じ、他の所得の収入金額又は総収入金額の収入すべき時期の取扱いに準じて判定した日


厚生年金保険法
(年金の支給期間及び支払期月)
第36条
年金の支給は、年金を支給すべき事由が生じた月の翌月から始め、権利が消滅した月で終るものとする。
2 年金は、その支給を停止すべき事由が生じたときは、その事由が生じた月の翌月からその事由が消滅した月までの間は、支給しない。
3 年金は、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の6期に、それぞれその前月分までを支払う。ただし、前支払期月に支払うべきであつた年金又は権利が消滅した場合若しくは年金の支給を停止した場合におけるその期の年金は、支払期日でない月であっても、支払うものとする。