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育児短時間勤務制度と子育て助成金 2012年05月31日

7月の法改正を控えて

育児・介護休業法では今まで適用が猶予されていた従業員100人以下の事業所にも次の制度がH24年7月より適用になります。

①短時間勤務制度

②所定外労働の制限

③介護休暇の創設

改正法の適用を受け、中小企業においても仕事と家庭の両立を計って行く視点が欠かせないものとなってきました。

このうち短時間勤務制度は、小学校就学始期に達するまでの子を養育する労働者が利用できる「1日原則6時間勤務とする措置」を含んだ制度を設けることが必要です。


子育て期短時間勤務支援助成金

そこで新しい短時間勤務制度を取り入れ、利用者が出た時に受給できる助成金を紹介いたします。

受給要件

①次のア及びイを満たす事業主

ア、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が、利用できる短時間勤務制度を労働協約や就業規則により制度化していること

(常用雇用する労働者100人以下の事業所で24年6月末以前に対象労働者が短時間勤務制度の利用を開始する場合は、少なくとも3歳に達するまでの子を養育する者が利用できる短時間勤務制度を労働協約や就業規則で定めて6か月以上利用したこと)


イ、雇用保険被保険者で小学校3学年までの子を養育する労働者であって短時間勤務を制度化し、希望した者に連続して6か月以上利用させたこと

②育児休業、所定外労働の制限、短時間勤務制度について就業規則や労働協約で定めていること

③次世代育成支援対策推進法に規定する一般事業主行動計画を策定し、労働局に届け、公表、周知させること


受給額

・小規模事業主・労働者数100人以下

1人目40万円、2人~5人目15万円

・中規模事業主・労働者数101人~300人

1人目30万円、2人~5人目10万円

・大規模事業場  省略

法改正により新しい短時間勤務制を設けなければならないので、あらかじめ就業規則等の改定をしておくことで、対象者が出た時にスムーズに申請できることになるでしょう。




消費税の改正について 個別対応と一括比例配分 2012年05月30日

平成23年6月に消費税法の一部が改正されました。

ずいぶん前の改正だと思うかもしれませんが、影響してくるのはこの平成24年4月からです。

改正内容が大きく3点ありますので、順番に見ていきます。


●「95%ルール」の適用要件の見直し

「95%ルール」とは、その課税期間の課税売上割合が95%以上の事業者は、課税売上に係る消費税額から、課税仕入等に係る消費税額を全額控除して計算できるという簡便的な仕組みです。

今回の改正では、この「95%ルール」の適用について制限が加えられ、当課税期間の課税売上高が5億円以下の事業者のみに限定されました。

平成24年4月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

当課税期間の課税売上高が5億円超の場合、または課税売上割合が95%未満の場合には、仕入控除税額の計算について、個別対応方式もしくは一括比例配分方式のいずれかにより行わなければならなくなります。

また、課税期間が1年に満たない場合は、課税期間の課税売上高を年換算した金額で行います。

一覧にすると以下のとおりです。

課税売上高   課税売上割合

5億円以下 ・  95%以上   ⇒全額控除   

5億円以下 ・  95%未満   ⇒個別対応方式 or 一括比例配分方式

5億円超  ・ 割合に関係なし ⇒個別対応方式 or 一括比例配分方式


・個別対応方式は、課税仕入等にかかる消費税額を

①課税売上にのみ対応する課税仕入等に係るもの

②非課税売上にのみ対応する課税仕入等に係るもの

③課税売上と非課税売上に共通して対応する課税仕入等に係るもの

の3つに区分する必要があります。

事務作業がかなり多くなりますが、通常は一括比例配分方式より税負担は小さくなります。


・一括比例配分方式は、個別対応方式のように区分する必要がありません。

事務作業は今までとほとんど変わりませんが、個別対応方式より税負担が大きくなります。

一括比例配分方式を選択すると、2年間適用を継続しなければなりませんのでご注意下さい。


★ポイント

・この改正は、平成24年4月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

したがって、事業年度が1年である法人については平成24年4月1日~平成25年3月決算分から、個人事業者は平成25年分から適用ということになります。

・消費税の課税方法を判定するとき、その課税期間の2年前、つまり「基準期間」の状況を見る場合が多いですが、今回は「当課税期間」とあります。

つまり、今期の課税売上が5億円超かどうか、今期の課税売上割合が95%未満かどうか、ということです。
 

全額控除から個別対応方式又は一括比例配分方式へ計算方法が変わることになれば、会計ソフトの消費税設定や今までの伝票の税区分等、すべて見直す必要があります。

課税売上高が5億円を超えそうか、否か、課税売上割合は95%以上か、未満か、毎月その推移を注視するとともに、決算まで予測することが大切です。





役員に社宅を貸与したときの課税関係 2012年05月29日

会社が社宅を貸与したときの課税関係について、役員の場合を見ていきます。

役員に社宅を提供する場合でも、無償または定額で貸与すると、税務上、役員に対して経済的利益の供与があったとされ、一定額の家賃(賃貸料相当額)との差額が役員給与として扱われ、源泉所得税、社会保険料の対象となります。

なお、この場合の、役員への経済的利益は、定期同額給与に該当します。

社員の場合は、賃貸料相当額の50%以上を受け取っていれば給与として課税されませんが、役員の場合は、より細かく次の3通りに分かれます。




①小規模な住宅
   
耐用年数が30年以下の場合、床面積132㎡以下の住宅

耐用年数が30年を超える場合、床面積99㎡以下の住宅

賃貸料相当額は次の算式の合計額

・その年度の建物の固定資産税の課税標準額×0.2%

・12円×(その建物の総床面積(㎡)/3.3(㎡))

・その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%



②小規模な住宅でない場合(①、③以外の住宅)

a 自社所有の社宅の場合

次の算式の合計額の12分の1

・その年度の建物の固定資産税の課税標準額×12%

 (耐用年数30年超の場合10%)

・その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×6%


b 借り上げ社宅の場合

次の金額のいずれか多い金額

・会社が支払う家賃の50%の金額

・上記aの金額




③豪華な住宅

床面積が240㎡を超えるもので、賃貸料、設備などを総合的に勘案して判定する。

床面積240㎡以下であっても、原則、プール等や役員個人の嗜好を著しく反映しているものは、算式の適用は無し

・時価(実勢価額)



①と②の場合は、税務上かなりの優遇がされていますが、③の豪華住宅になると、通常の賃貸料をとらないと、課税される部分が大幅にアップされてしまいます。




消費税の軽減税率 2012年05月28日

消費税の複数税率化

[

「野田首相が、一体改革の合意促進策として食料品軽減税率の採用に積極的である」とマスコミ報道がされています。

消費税は一律税率なので、税率改正は常に全国民を相手にすることになり、内閣の命運をかけた一大事業とならざるを得ませんでした。

しかし、複数税率にすると、商品分類別に税率を定めることが可能になるので、分類消費税という性格になります。

そうなると、贅沢品・嗜好品を優先的に高税率にし、その他の商品も贅沢的・嗜好的面のあるものを細分化することにより、差別化政策で税率アップを図ることが容易になります。


単数税率・食料品非課税

事務作業が著しく大変になるので、消費税の複数税率化に対しては、税理士には反対の人が多いです。

国税サイドも、税の執行と効果を考えると、「分類的な税率アップでは税収は限定的となり、執行の複雑化・困難化に比し効果が薄すぎる」と言うと思います。

国税の執行現場に尋ねたら、「単数税率のまま税率アップをしてもらい、その代わりに非課税枠を拡げる、という方がはるかに適正執行を確保しやすいし、税収確保に資する」と言うでしょう。


なぜ非課税が税収確保になるか

非課税が税収確保にあたるこのロジックは解説が必要です。

①消費税10%、食料品は5%のまま、という場合、食料品に係る国の消費税収入は最終消費者の食料品購入価格の5%です。

②消費税10%、食料品は非課税で、食料品の小売業者の課税仕入原価が8割とすると、国の消費税収入はゼロではなく、最終消費者の食料品購入価格の8%となり、3%の税収増になります。

消費税は、消費者の手に届く前の長い過程で、それぞれに関わった事業者によって仮に納められる前段階消費税がありますが、それが②の説明では8%ということで、これが国に収納されたままになるのです。


最後のドタン場で非課税策に

非課税による税収増のカラクリは、最終事業者を最終消費者に仕立て、前段階消費税控除を禁じ、一般に言う”益税”の反対の”損税”を負担させることです。

消費者と接する事業者の反対が予想されるので、誰も気付かないうちに実現させるシナリオとして用意されている可能性があります。




労災保険のメリット制 2012年05月25日

労災事故発生と保険料率の関係

労災保険のメリット制の保険料率は、事業の種類ごとに過去の労働災害の頻度や重篤さ等に応じて定められています。

しかし、事業の種類が同じであっても作業環境や災害防止対策等の違いに応じて災害発生率は違ってきます。

そこで労災保険では、労災防止努力の促進や事故の有無による保険料負担の公平性を計る目的で、一定の要件を満たす事業場に適用する労災保険料率を災害発生状況に応じて増減させる制度「メリット制」を設けています。


メリット制の適用要件

継続事業にメリット制が適用されるには連続する3年度において次の①②③のいずれかに該当する事業で、その3年度の最後の年度に属する3月末日現在で、労災保険に係る保険関係が成立した後3年以上たっていることが前提条件です。

①100人以上の労働者を使用していること

②20人以上100人未満の労働者を使用している事業場で、労働者数に事業種類ごとに定められた労災保険料率から通勤災害の災害率(現行1000分の0.6)を減じた率を乗じて得た数が0.4以上であるもの

③一括有期事業(建設事業及び立木の伐採事業)で確定保険料の額が100万円以上であるもの


メリット制の適用は

メリット制適用は前述の要件を満たした時に保険料の増減が行われます。

その判定は連続する3年度の保険料額に対する給付額等の収支率を基に段階的に最大40%の幅で割増や割引が行われます。

具体的には収支率が75%以下の時に減じ、85%を超えると増加されます。

実際のメリット率適用は連続した3年度の最後の年の翌々年度になります。


メリット制の改正点

平成24年の3月までは一括有期事業の場合、先に示したメリット制の適用要件の確定保険料の額が100万円以上となっていましたが、4月より40万円以上と大幅に緩和されました。

ただし、労災保険料率の増減幅については、確定保険料が40万円以上100万円未満の場合は最大30%のメリット率で適用されます。

メリット率の恩恵を受ける事業場が増えることは確かなようです。


           




LED照明への取替費用 2012年05月24日

エコ家電への買い替えや節電などの省エネ対策として、照明をLEDに取り替えようかとお考えの企業や事業主の方もいらっしゃると思います。

さて、その取替費用は、修繕費としていいのでしょうか。


国税庁は「自社の事務所の蛍光灯を蛍光灯型LEDランプに取り替えた場合の取替費用の取り扱いについて」というQ&Aを公表しています。


それによると、まず、修繕費と資本的支出の定義が説明されています。

修繕費とは、通常の維持管理のため、原状回復のために要した金額を言います。

資本的支出(資産計上するもの)とは、その資産の価値を高め、耐久性を増すために要した金額を言います。


そのうえで事例を当てはめ、

「LED照明は照明設備の一部品であり、その部品の性能が高まったことをもって、照明設備としての価値等が高まったとはいえない。」

よって、修繕費としての処理が相当であると結論付けています。

ただし今回の事例では、前提条件として、

「天井のピットに装着された照明設備の工事はない」とありますので、注意が必要です。


参照:http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/04/12.htm




相続税の物納制度 2012年05月23日

物納は最後の砦

国税は金銭で納付する事が原則ですが、相続税については延納によっても金銭で納付することが難しい時は、一定の相続財産による物納が認められています。

延納とは、相続税が10万円を超えた際に担保を提供することによって、相続税を年賦で支払える制度です。

ただし、延納には利子税がつきますので、実際の相続税よりも、総額では多く払うことになります。

物納は、延納でも支払えない場合に利用できる制度ですから、最終手段と言うべきものです。

「金銭は老後の為にとっておいて、土地を物納して相続税を納めたい」といった方法は取れません。


物納できる財産と物納順位

物納できる財産は日本国内のもので、その時の相続で取得したものに限られます。

さらに物納には順位があり、

1.国債・地方債・不動産・船舶

2.社債・株式・証券投資信託または貸付信託の受益証券

3.動産

となっています。

「国債を持っているのに、株式で物納する」といったことは、税務署が認める特別な場合だけしかできません。

不動産の物納条件にも注意が必要

例えば、担保がついている不動産、隣との境界が曖昧な土地、道路に通じていない土地などは物納できません。

物納により収納される財産の価額は、原則として相続税評価額(申告した価額)です。

また、小規模宅地の減額の適用を受けた宅地については減額後の価額になりますので注意が必要です。

さらに、実際に売買して、諸経費や譲渡所得税等の金額と、相続税評価額で物納した場合を比較検討し、物納の選択が有利かどうか判断しなければなりません。




住宅手当と社宅の課税関係 2012年05月22日

会社が社員のための住居費用を援助する場合、住宅手当の支給と社宅の貸与の二つの方法があります。

住宅手当の場合は、給与として扱われますので、源泉所得税や社会保険料の対象となります。

社宅を貸与する場合には、社員から1か月当たり一定額の家賃(賃貸料相当額)の50%以上を受け取っていれば給与として扱われません。

賃貸料相当額とは、次の①~③の合計額になります。

① その年度の建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2%

② 12円 × (その建物の総床面積(㎡)/3.3(㎡))

③ その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22%


社員に無償で貸し出す場合には、賃貸料相当額が給与として課税されます。

また、賃貸料相当額の50%未満を受け取っている場合には、賃貸料相当額と受け取っている家賃との差額が、給与として課税されます。

この賃貸料相当額は、実際の家賃相場より、通常は低くなるため、社員にとっては、安い賃料で住むことができます。

ただし、他から借りた住居を社宅として社員に貸す場合でも、上記の金額が賃貸料相当額となりますので、貸主などから固定資産税の課税標準額を確認する必要があります。

借り上げの場合、入居者が直接契約してしまうと、社宅の貸与と認められず、給与として課税されてしまうので、注意が必要です。

役員に対して社宅を貸し出す場合には、別の規定がありますので、次週またこの場にてご案内いたします。




社員の交通事故と企業の対応 2012年05月21日

道路交通をめぐる最新情勢に合わせ、道路交通法はたびたび改正が行われています。

毎回厳しくなる取締りに、道路交通法違反件数も年々減少してはいるようですが、それでも交通事故がなくなることはありません。

社員がもし交通事故を起こしてしまった場合、従業員やその家族はもちろん、企業にとっても大きな不利益となることは言うまでもありません。


事故発生時の責任と罰

交通事故を起こした場合、道路交通法に基づく行政上の責任、刑事上の責任、また一般的に被害者への損害賠償が求められる民事上の責任など、複数の法律的責任を負うことになります。

これらの責任は事故を起こした社員個人だけでなく、その社員を雇用している企業に対しても連帯して責任を問われることがあります。

たとえば、社用車で営業を行っている社員の運転免許が失効し、無免許運転状態で事故を起こしたとします。

民法では「社員が業務執行中に自動車事故を起こし第三者に損害を与えた場合、使用者である企業が責任を負わなければならない」という使用者責任に関する条項を設けており、この責任から免れるには「使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をした」こと等を立証しなければなりません。

民法以外でも、自動車損害賠償保障法では、企業が「その運行によって利益を得ていたか」ということで責任を判断する運行供用者責任が定められており、これについても企業が責任を免れることを立証するのは極めて困難です。

運転免許の確認など、必要な措置を企業が怠っていた場合には、やはり企業の管理責任が問われ、法律上の責任に加え企業の社会的信頼に関わることは間違いありません。


企業側の対策

このような事故を想定し、就業規則やマイカー通勤規定を作成している企業も多いでしょう。

しかし、規則には入れてはいるものの、実際に企業側が確認をしていなければ対策として具体的な効果を発揮しません。

社員の運転免許証を確認する

社用車の使用目的を確認する書面やマイカー通勤者に対する誓約書を作成する

といった確認を、少なくとも年に一回は行うこと、

また法令順守の徹底を指導するなどの方法で、社員と会社、双方の身を守る対策を講じたいものです。




業績考課の方法 2012年05月18日

人事考課を行う際、管理職や上級社員の場合、業績考課が最も重視されます。

つまり、上位階級になるほど発揮した能力や意欲そのものではなく、努力して得た結果としての業績に注目して考課するわけです。


考課の方法

「業績」は例えば営業職は売上高・利益の大きさ、企画スタッフ職は企画・提案の効果、開発職は開発製品の事業貢献度等、職種・等級によって異なり、自社の業務実態に合った考課項目・考課着眼点を人事考課シートに記載して考課します。

業績の捉え方は、考課対象期間(通常1年)の合計、または平均値とし、被考課者間で公正・妥当と見られるように定義します。


「業績考課」の問題点と対策

業績考課で問題となりやすいのは、プロセスでの発揮能力が高くとも、外部環境などの影響で業績が得られなかった場合です。

公正に評価するには、外部環境で逆風が吹いた場合、その状況を回避するために努力して得られた業績、その悪い状況を跳ね返す努力の余地があったかどうか、

追い風が吹いた場合は、良い条件の下で得た業績であり、その良い条件を十分に利用して、さらに業績を高める余地がなかったかを考課することが重要です。

なお、外部環境等与件の変化の業績への影響は、企業全体の業績に影響するので、上位役割等級にある者ほど、貢献実績の評価においてその影響を直接的に受けることになり、その合意形成が必要です。

チームの努力によって業績が得られた場合は、チームメンバー個々のチームへの貢献を的確に考課することが必要で、その事実はチームメンバー自身が最も良くわかっている場合が多く、メンバー間の相互評価を参考とする仕組みを検討すると良いでしょう。




平成22年分の相続税の申告状況 2012年05月17日

先月、国税庁は平成22年分の相続税の申告状況を公表しました。

集計の対象となっているのは、平成22年中に亡くなった方(被相続人)に係る相続税の申告で、相続税額のあるものです。

平成22年中の被相続人数は全国で約120万人で、このうち相続税額のある申告の対象となった被相続人数は約5万人。

課税割合は4.2%で、25人に1人は相続税額が算出されるくらいの相続財産を保有していたということになります。


これを東京国税局管内(東京、神奈川、千葉、山梨)だけで見てみると、被相続人は約23万1千人、このうち相続税額のある申告の対象となった被相続人数は約1万6千人です。

課税割合は7.0%にもなります。


相続税の増税案(税率の変更、基礎控除の引き下げ等)は今のところ先送りになっています。

しかし、今は「100人のうちたった7人」でも、近い将来、自分が該当する可能性もあり得るわけです。

自分はそんなに財産持ってない・・・なんて言わず、一度、自分の財産がどのくらいあるのかを試しに計算してみてはいかがでしょうか。




財産調書の次は出国税 2012年05月16日

国境に消える税金への対策

今年立法化された国外財産調書制度は、資産の海外への逃避に対する施策ですが、欧米には以前から各国それぞれの個性をもった海外財産情報申告の制度があります。

地続きのEU諸国や白人文化圏の国々では、課税回避のための人と物の異動が容易だったので、その対処としての租税施策にも歴史があります。


欧米諸国での制度状況

例を挙げると、アメリカでは、納税者番号制度・海外資産に限らない広範な情報申告制度・罰則・強力な税務調査を一体とした制度化がなされています。

フランスには、海外口座情報の報告・海外送金報告記録保存義務・富裕税による海外資産を含めた一般財産申告制度があります。

カナダでは、保有海外資産の資料提出義務があります。

スウェーデンでは、海外資産保有居住者に海外銀行等への照会同意義務があります。


物の異動の次は人の異動

人の非居住者化という異動については、米・英・独・仏・蘭・加・墺・豪・デンマーク・フィンランド・ニュージーランドと、多くの欧米諸国で出国に係る課税制度を用意しています。

その一つが、出国税で、出国に際し、財産を処分し現金化したものと仮定して所得税を課すものです。

分類的には、全ての財産を処分したものとするのが一般出国税で、有価証券に限って処分したものとするのが制限出国税です。

その外に、出国により非居住者となっても居住者とみなして課税を続けるみなし居住者課税制度があります。


国家による人と個人財産の捕捉

富裕層への課税の強化は世界の流れですが、個人課税の重い国から軽い国に移住する富裕層囲い込みを目的にした各国家の租税戦略もあります。

それでいて、富裕層自身の中から富裕層への課税強化の必要が唱えられるような時代にもなっています。

さらに、各国の個人課税強化への担保として、国家による人と個人財産の捕捉を強化する試みが進んでいます。

わが国でも、国境に消える税金への対策の研究が進んでおり、富裕層課税への強化も避けて通れないとすると、遠からず、出国に係る新しい制度案が出てきそうです。




短期前払費用の特例 2012年05月15日

当期中に支払う翌期の研修旅行費用を当期の費用に計上出来るでしょうか?

この場合は、翌期の経費の前払いであるので、原則的に当期の損金にはなりません。

ただし、次の一定の要件を満たした前払費用については、当期の費用として認められます(短期前払費用の特例)。


・一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるもの

・支払った日から、一年以内に役務の提供を受けるもの

・継続的に支払事業年度において、経費処理していること

・収益の計上と対応させるものでないこと



従って、家賃や保険料を一年分前払いした場合には、継続的な契約であり、一年以内の条件も満たしますので、経費処理を継続的に行っていれば、当期の経費として算入することができます。

特に、決算月に支払う年払い保険料は、有効な節税対策として、多くの企業で活用されています。

これらに対して、広告宣伝費、税理士費用、前出の研修旅行費などは、この特例の対象とはなりません。

これらのサービスは、等質等量とは言えないこと、継続性がなく単発的なものであることなどから、前払費用には該当しないのです。

そもそも、短期前払費用の特例は、事務処理の煩わしさを考慮して、あくまで重要性の乏しいものについて、企業会計の簡便な処理を、税法上でも認めるという趣旨の特例です。

ですから、企業の事業内容から判断して、原価的性質のものや、重要な営業費用となるものは、適用を受けることはできません。

従って、判断基準としては、「重要性の原則の範囲から逸脱していないかどうか」の確認が必要となってきます。




酒税法と自家醸造 2012年05月14日

最近はメニューに「自家製」と書かれた梅酒などを提供している飲食店を目にするようになりました。

本来、酒類の製造は酒税法により制限されており、酒類製造免許の取得や酒税の納税などが必要となります。

なぜ製造免許を持っていない飲食店などでも提供することができるのでしょうか。


平成20年4月の特例措置による緩和

焼酎等に梅等を漬け込む行為(=混和)は、原則として酒類の製造に該当します。

しかし、平成20年4月30日に設けられた特例措置により、次の条件をすべて満たす場合であれば、飲食店等でお客様に対し自家製梅酒等をご提供することが可能になりました。

1.特例措置が受けられる事業者

特例措置は、酒場、料理店、民宿、旅館、飲食店等酒類を飲用として提供する事業者の方が対象です。

その場でのご提供が前提とされているため、お土産などとしてお持ち帰りすることは認められていません。


2.提供できるお酒と製造制限

提供できるお酒は、アルコール分20度以上のウイスキー、ブランデー、スピリッツ等一定の蒸留酒に、糖類や梅の他、以下の使用禁止物品以外のものを混和したものです。

また、混和後アルコール分1度以上の発酵がないものに限られます。

≪使用禁止物品≫

米、麦、あわ、とうもろこし、こうりゃん、きび、ひえ、でんぷんまたはこれらの麹、ぶどう(やまぶどうを含む)、酒類、アミノ酸、ビタミン類等


緩和されたとは言っても

アルコール度数が20度以下のお酒と、上記にある使用禁止物品を混和した場合、漬け込む過程で醗酵が生じ、

アルコール分が生成される可能性があります。

つまり、漬け込む過程でアルコール分が絶対に生成されないという条件に基づいて設けられたのがこの特例措置であり、

梅酒のように焼酎へ使用禁止物品でない果実等を混和するお酒の場合は、上記の条件下において自家醸造することが可能です。

ちみに最近すっかりお馴染みのマッコリは、製造に米と麹を使い、乳酸菌で発酵させるお酒であり、使用禁止物品に当たることなどからこの特例措置を以ても醸造、提供することはできません。

特例措置による緩和とは言っても、やはり酒税法の壁が高いことは変わらないようです。




配当金の効力発生日 2012年05月11日

受取配当金益金不算入の趣旨

法人税法では、税金の二重課税を排除する目的で、受取配当金の全部または一部を益金不算入としています。

これは、「配当金は課税済み後の所得から支払われるものであり、一方、これを受領した側にも課税するとなると同一の所得に対して二重に課税することになる」からです。


配当金益金不算入の割合は、株式等の区分によって異なります。

①完全子会社株式等の配当は100%

②関係法人株式等の配当は「配当金-負債利子」×100%

③①及び②以外の株式等の配当は「配当金-負債利子」×50%です。

なお、短期所有株式に係る配当には、この益金不算入の適用はありません。


関係法人株式等の配当とは

益金不算入の適用を受けるためには、配当支払い会社の株式を配当等の計算期間の全期間を通じて所有していなければならないのかというと、必ずしもすべてがそうでありません。

関係法人株式等の配当にあっては、配当金支払い会社の株式等の25%以上を、配当金等の効力発生日以前6か月以上継続して保有していれば、100%の益金不算入の適用を受けることができます。


配当金の効力発生日とは

配当金の効力発生日は、一部の上場会社を除き、株主総会で配当決議する際に、その配当金支払いの効力が生ずる日も定めなければならないことになっています。

上場会社の多くは、総会での配当決議の翌日となっていますが、その決まりはありません。

会社の資金繰りなど、さらには、配当金受領会社の当該配当に係る株式が、関係会社株式等に該当するようにその調整をすることもできます。

具体的には

配当受領会社X社の事業年度は、24年4/1~25年3/31

一方、

配当支払い会社Y社の事業年度は、23年10/11~24年9/30

X社は24年7月1日にY社の株式25%以上を買収しました。

Y社の配当基準日は、9月30日で、配当決議は12月25日、その効力発生日を翌26日とすると、

当該株式の配当は「関係法人株式等の配当」には該当しません。

しかし、効力発生日を翌年25年1月1日以後に定めれば、関係法人株式等の配当に該当することになります。

 




業務中の交通違反に係る反則金の経理処理 2012年05月10日

従業員が業務中にスピード違反や駐車違反をしてしまったため、個人事業主や会社が反則金を支払った場合、どうなるのでしょうか?

従業員が業務中に犯した違反に係る交通反則金は、経費になりません。

反則金は罰金です。

経費と認めてしまったら、罰金を支払った分だけ利益が減り、税金も安くなってしまいます。

罰則としての意味がなくなってしまうからです。


では、仕訳にすると、どうなるのでしょう。

個人事業主の場合: 事業主貸 / 現金

法人の場合: 租税公課 / 現金

※法人の場合、このままですと租税公課=経費になってしまいますので、法人税を計算する際に調整して、経費から除外します(損金不算入)。


一方、違反に付随して支払ったレッカー代等は、反則金とは異なり、経費にすることができます。


仕訳は、次のとおりです。

支払手数料/現金

消費税は不課税取引です。

会計ソフトで仕訳を入力すると、自動的に課税取引と処理される勘定科目ですから、注意が必要です。




人事考課の要素 2012年05月09日

一般に人事考課では、社員に与えた仕事の結果や遂行プロセスを観察して、「業績・発揮能力・意欲」の三つの要素で、そのレベルを測定・考課します。

「業績」は、通常1年の考課期間にあげた仕事の結果であり、それぞれの役割に応じて、

例えば営業職の場合は売上高・利益など、定量的・数値的に測定し、企画職の場合は、担当した企画業務のできばえ・活用効果など(定性的で数値で捉えられない場合がある。)を測定します。

一般事務職では仕事の的確性や処理スピードなどを観察して測定します。

「発揮能力」は、仕事のプロセスで発揮した業務知識や専門知識・技術などの活用度・計画力・実行力・折衝力・調整力・リーダーシップ(管理・監督職)メンバーシップ(一般社員)などを考課項目とし、本人の行動事実を観察して測定します。

最近は「コンピテンシー(個々の企業において業績をあげている社員の行動特性)」に注目して測定・考課する傾向が強くなっています。

「意欲」は、仕事に取り組んだ際に本人が示した意欲・姿勢を、行動事実を材料として測定・考課します。

3つの考課要素は、入社初期・中堅・ベテラン社員・管理職等の階層によって重視する項目をウエイト付けするのが適切です。

経営者・人事担当役員の留意点

業種・職種の業務の特徴、社内階級に応じて、社員がやる気を出すのに効果的な考課要素・項目を選び、人事考課表を設計し、考課・調整の仕組みを設計することが大切です。

それを社員に公開すれば、経営者が社員に期待するメッセージが的確・明快なメッセージとして伝わり、モラル向上につながります。





少額減価償却資産の取得価額 2012年05月08日

少額の減価償却資産を事業の用に供した事業年度において、その取得価額に相当する金額を損金経理した場合には、その損金経理した金額は、損金の額に算入されます。

1.少額の減価償却資産

・取得価額が10万円未満のもの

・使用可能期間が1年未満であるもの
  

2.一括償却資産

・取得価額が20万円未満のもの

・3年間で均等償却する

・確定申告書に明細書を添付


3.中小企業者等の少額減価償却資産の特例

・取得価額が30万円未満のもの(合計300万円が限度)

・青色申告法人である中小企業者等

・確定申告書に明細書を添付


では、その取得価額の金額とは、いったい、いくらなのでしょうか。

消費税の分は取得価額に含めるのでしょうか、含めないのでしょうか?

この取得価額は、通常1単位として取引されるその単位ごとに判定します。

例えば、1組、1揃いで使用するものは、ひとつひとつの部品が10万円未満であっても、1組ごと、1揃いごとに判定します。


消費税の取扱いについては、事業者が適用している消費税の経理処理方式に応じて変わります。

例えば、税込30万円の備品を購入した場合、税抜経理では、取得価額が税抜金額の285,714円となり、中小企業者等の少額減価償却資産の特例が適用できます。

しかし、税込経理では、税込金額300,000円以上になるので、特例は適用できないことになります。


また、一括償却資産は固定資産税の償却資産の対象になりませんが、中小企業者の特例は、償却資産の対象となりますので、償却資産税申告の際には注意が必要です。




将来の税増収プラン 2012年05月07日

財務副大臣の発言から

予算委員会で、財務副大臣が「所得再分配機能をどう取り戻すかが重要課題」とし、施策案として

①所得税・相続税の最高税率を上げる

②富裕税という考え方もある

③マチマチな税率構造を見直す

を挙げていました。

①は今、審議中の一体改革案の中ですでに上程されています。


②と③は、多分、財務省が腹案として、すでに準備しているものなのでしょう。


富裕税をめぐる国際状況

現在、富裕税が施行されている国は、フランス、スイス、オランダ、ノルウェー、インドなどですが、過去、富裕税を施行させた経験のある国は日本を始めたくさんあります。

最近、ポルトガルが富裕税を復活させたというニュースがありました。

いずれも税率は、0.2パーセントから3パーセントといった低率で、所得税の補完税としての役割を持たされています。


日本の富裕税導入と廃止の歴史

日本では、昭和22年(1947)に所得税の最高税率は85%になり、昭和24年(1949)のシャウプ勧告は、このように高い税率は勤労意欲にマイナスであるとして、所得税の最高税率を下げ、その補完税として富裕税を導入するように勧告しました。

その結果、昭和25年(1950)に所得税の最高税率が55%に抑えられ、同時に0.5~3%の累進税率で富裕税が導入されました。

しかし、富裕税は税収総額が多くなく、資産の包括的把握に税務執行上の困難を来たしたため、昭和28年(1953)に廃止され、代わりに所得税の最高税率が65%に上げ直されました。

国外財産調書制度創設につづき、財産債務明細書の制度強化が図られるとすると、日本でも富裕税が復活するかもしれません。

税率構造多段階化という増税テクニック

所得税や相続税の税率に3%、5%、10%刻みのところがあるので、刻み幅を統一する、という名目による案もありそうです。

もし税率を1%刻みにしたら、10%税率の人の中には19%、20%税率の人の中には29%の税率になる人が出てきます。

最高税率のこれ以上のアップは国際比較の上からして困難そうですが、税収の増加策としての税率構造の多段階化は極めて有効だと思われます。





パワハラと防止策 2012年05月02日

増え続けるパワハラ相談件数

平成24年1月に厚生労働省は「職場のいじめ、嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告書」を発表しました。

これは、企業の82%が労働局に寄せられたいじめや嫌がらせに関する相談が8年で6倍に増加していることが背景にあります。


厚労省報告書のパワーハラスメントの定義

「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係等の職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的、身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為」とされています。

ここでいう優位性とは職場における役職の上下関係のことではなく、当人の作業環境における立場や能力を指しています。

したがって部下が上司に対して、または、同僚間に対してもパワハラはあり得るということになります。

具体的な行為としては

①身体的攻撃

②精神的攻撃

③人間関係の切り離し

④過大な要求

⑤過小な要求

⑥個の侵害

等があります。

パワハラ問題で難しいのは、どこからどこまでの範囲の行動がパワハラなのかわかりにくく、最初は適切な指導や助言であったものが時間と共にエスカレートしてしまうこともあるからです。


職場内で問題を解決するには

先の報告書では予防策として 

①経営トップのメッセージ

②ルール決め

③実態把握

④教育する

⑤周知する

さらに解決策として

①相談の場の設置

②再発防止策

等が挙げられています。

一昔前まではパワハラのようなことはどこの職場にもありそうな光景であったかもしれませんが、職場環境の変化により、仕事のストレスが大きくなってきていると言えるのかもしれません。

仕事熱心である上司がパワハラを指摘されたり、部下が職場不適応でメンタルに問題が生じたりすることも見受けられます。

このような問題を解決するには、互いのコミュニケーションギャップを埋める調整者を配置して、相談できる環境が必要でしょう。

苦情処理委員会等と言わないまでも人事部や上司が相談相手になれる体制も有効です。

積極的な予防策が活力ある職場には必要です。





期限切れ欠損金の法令規定と通達規定 2012年05月01日

期限切れ欠損金とは

期限切れ欠損金は、法令上の用語でなく造語ですが、平成22年度税制改正で確実にその市民権を得ました。

この期限切れ欠損金は、清算事業年度の課税方式が「損益法」に改められたことにより、債務超過法人に青色欠損金を上回る債務免除益が生じてしまい、担税力のない課税所得が発生してしまうことを回避する目的で、一定の条件下で清算事業年度において損金算入を認めるものです。

期限切れ欠損金の内容・範囲は、所得から控除できる期限を経過してしまった欠損金だけではありません。

社外流出・損金不算入である「交際費」や「寄附金」もこの期限切れ欠損金に含まれています。


法令上の期限切れ欠損金

欠損金については、法人税法で「損金の額が益金の額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう」と定義しています。

そして、益金及び損金の額については、法人税法で「別段の定めがあるものを除き、公正な会計基準にしたがって計算されるもの」と定めています。

期限切れ欠損金は、これら定義からすると、青色欠損金の内、控除期限を経過した欠損金からなるものと理解されます。


通達における期限切れ欠損金

しかし、通達における期限切れ欠損金は、

①「期首現在利益積立金の合計額として記載されるべき金額で、当該金額が負である場合の当該金額」- ②「青色欠損金等の額のうち損金の額に算入される金額」と規定しています。

すなわち、

①は法人税の申告書別表5(1)「31」①欄の金額、

②は法人税申告書別表7(1)「2の計」欄の金額ということになります。

この通達の規定では、期限切れ欠損金には、社外流出・損金不算入である「交際費」や「寄附金」をも含んでいます。


なぜ通達の規定なのか

理由は3つあります。

1つは、過年度の期限を経過(失効)した青色欠損金を補足することは困難であること。

2つめは、損金に、別段の定めにより社外流出・損金不算入となる「交際費」や「寄附金」を含めても、納税者にとって損金算入の額が拡大するので、不利益にはならないということ。

3つめは、課税実務を簡便にするということ。

だと思われます。