国税通則法の改正(税務調査の事前通知)
平成25年1月1日以後に行われる税務調査について、納税義務者への事前通知制度が国税通則法上明文化されました(改正通則法74条の9以下)。
税務調査は、「任意調査」が建前であることから手続きについてこれまで細かな明文の規定がありませんでした。
しかし、税務調査は納税者に事実上相当の負担を与えていることから、手続きを明文化し、納税者の権利利益の保護を図るため本改正がなされました。
以下、事前通知制度のポイントを挙げます。
1.事前通知の対象となる税務調査
実地の調査のみが事前通知の対象です。
取引相手に対して行う反面調査や店舗内部を下見するような内観調査は、事前通知の対象ではありませんので注意が必要です。
2.通知の相手先
納税義務者及び税務代理人(税務代理権限を証する書類を提出している税理士等)
3.通知の方法
書面である必要はなく、電話等でも可能とされています。
電話等による口頭の通知の場合には以下の通知内容は必ずメモをとることが肝要です。
4.通知の内容
(1)実地調査の開始日時
(2)調査を行う場所
(3)調査の目的
(4)調査の対象となる税目
(5)調査の対象となる期間
(6)調査の対象となる帳簿書類その他の物件
(7)その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項
5.事前通知がされない場合(改正通則法74条の10他)
これまでも現金取引の多い飲食店等でも事前通知なしの無予告現況調査は行われてきましたが、本改正により事前通知の例外として明文化されました。
「税務署長等が調査の相手方である納税義務者の申告や過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等若しくは税関が保有する情報に鑑み、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合」には事前通知を要しないと規定されています(改正通則法74条の10)。
本改正により納税義務者の権利として事前通知制度が明文化されました。例外的に事前通知なしに税務調査が実施された場合には、後日紛争になった場合に備えて不通知の理由(例外規定適用の理由)を調査官から聞いてメモをしておくとよいでしょう。
また、調査の過程において通知された対象以外に「非違が疑われることとなった場合」には、再度事前通知をすることなく調査ができると規定されています(改正通則法74条の9第4項)。
事前通知された調査対象以外の調査がされた場合にも、後日紛争になった場合に備えて「非違が疑われる」理由を調査官から聞いてメモをしておくとよいでしょう。