国税通則法の改正(税務調査の終了その他)
1.税務調査終了の際の手続きの整備
平成25年1月1日以後に行われる税務調査について、税務調査終了時の手続きの整備がなされました(改正通則法74条の11)。
(1) 更正決定等をすべきと認められない場合の書面による終了通知
税務調査において申告内容に誤りが認められない場合や申告義務がないと認められる場合など、従来は「調査結果のお知らせ」(是認通知)という書面が届くことがありましたが、本改正により終了通知を書面で行うことが明文化されました。
従来は申告に対する指導事項がある場合にはお知らせは送付しない取扱いがなされていましたが、改正後は指導事項があっても終了通知がなされるようになります。
調査の結果、問題がない場合には指導事項の有無に関わらず終了通知がなされることにより、調査終了がより明確になり資料整理の負担から開放されるというメリットがあります。
(2) 更正決定等をすべきと認められる場合の調査結果の内容説明と修正申告等の勧奨
税務調査において申告内容に誤りが認められた場合や申告義務がありながら無申告であったことが判明した場合には、調査結果の内容(誤りの内容、金額、理由)を説明し、修正申告や期限後申告を勧奨することができることが明文化されました。
修正申告等を勧奨する場合においては、納税義務者に対して、修正申告等をした場合に異議申立てや審査請求ができなくなるが更正の請求はできることを説明し、その旨を記載した書面が渡されることになります。
調査結果の説明を受ける際には、調査官から更正決定等の理由として根拠条文や認定事実と証拠などを納得するまで聞いておくことが大切です。
2.その他の改正
(1)身分証明書の提示等(改正通則法74条の13)
国税庁等の職員が税務調査のために、事務所や事業所等に赴く際には、身分証明書を携行し、請求があった場合には提示しなければなりません。
従来、所得税法や法人税法などの個別の法律に規定があったものが本改正により国税通則法にまとめて規定されました。
(2)調査提出物件の留置(改正通則法74条の7)
国税庁等の職員は、国税の調査について必要があるときは、その調査において提出された物件(調査対象となる帳簿などの資料)を留め置くことができることが規定されました。
留め置くとは、調査官が資料を持ち帰るということです。
従来も調査官が納税者の許可を得て資料を持ち帰ることは行われていましたが、本改正により明文化されました(平成25年1月1日以後に提出された物件について適用)。
「国税の調査について必要があるとき」に「留め置くことができる」との規定の反対解釈から、「必要があるとき」には留置を拒否できないことになりました。
「必要があるとき」とは、調査官が主観的に必要と考えるだけでは足りず、客観的な必要性があると判断されなければ留置は認められないと考えられています(質問検査権の「必要があるとき」の解釈について、最高裁昭和48年7月10日判決参照)。