消費税サービスにご注意
商店街でよく「消費税サービス」などと書かれた広告や値札を目にします。
しかし、この表示にはいつも違和感を覚えます。
なぜなら、消費税をサービスしても、そのサービス後の価格にはなお消費税が含まれているからです。
ここで消費税の仕組みについて簡単にご説明します。
消費税の納税義務者は「個人事業者」「法人」「保税地域から外国貨物を引き取る物」であり、消費者には納税義務はありません(消費税法5条)。
消費者は上記納税義務者との「課税取引」について消費税を負担して納税義務者に支払うだけです。
納税義務者は、原則として、課税取引について消費者や取引先から預かった消費税(売上げに係る消費税)から、課税取引について自らが消費者として仕入先や取引先に支払った消費税(仕入れに係る消費税)を控除して、その差額を消費税として納税する仕組みになっています。
消費税が課税される「課税取引」については消費税法に以下の条文があります。
消費税法4条
国内において事業者が行った資産の譲渡等には、この法律により、消費税を課する。
消費税法2条1項4号(資産の譲渡等の定義)
事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(中略)をいう。
上記のように「課税取引」であるか否かは法定されており、商店が自由に課税取引か否かを決定できる訳ではありません。
もちろん、消費税をサービスするかどうかを自由に決定することもできません。
また、消費税法には納税義務を免除される免税事業者の規定があります(消費税法9条)。
基準期間(前々年又は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者は原則として当年又は当事業年度の消費税の納税義務が免税されます。
ただし、免税事業者であっても「課税取引」については取引先等から消費税を預りまたは消費税を支払わなければなりません。
なぜなら、消費税を納める義務が免除されるだけであって、その前段階の「課税取引」が「非課税取引」や「不課税取引」になる訳ではないからです(いわゆる「益税」です)。
以上から、商店街でよく見かける「消費税サービス」などと書かれた広告や値札が正確な表記ではないことがご理解頂けたと思います。
免税事業者らしい零細な個人商店であったとしても、取引に消費税は課されており、消費税をサービスできないことは同様です。
「消費税サービス」ではなく「消費税分サービス」とした方がよいでしょう。