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事業所得と譲渡所得の区別   

今回は、事業所得と譲渡所得との区別です。

事業所得は経済活動の成果であるのに対して、譲渡所得は値上がり益(キャピタルゲイン)の清算課税としての性格を有するので、両者の区別が問題になります。

例えば、土地を売却すれば通常は譲渡所得になりますが、宅地造成業者が土地を売却した場合には事業所得になるのかという問題意識です。

一般論としては、資産の譲渡があった場合の所得分類については、所有者の意思によらない外部的条件の変化に基因する資産価値の増加は譲渡所得に当たり、所有者の人的努力と活動に基因する資産価値の増加は事業所得(又は雑所得)に当たると解されています(金子宏「租税法」より)。

平たく言えば、自ら努力して資産の価値を増加させた場合にはその増加部分は事業所得(又は雑所得)となり、経済状況や地価の高騰などの外部的な事情により資産の価値が増加した場合にはその増加部分は譲渡所得になるということです。

先ほどの土地の売却の例で言えば、地主がその所有地を現状のまま一回的・散発的に譲渡した場合には譲渡所得が発生しますが、それを宅地として造成して分譲した場合等は事業所得(又は雑所得)が発生することになります(東京高裁昭和48年5月31日判決)。

また、宅地を造成しなくても、土地を営利目的で反復継続的に譲渡した場合には、譲渡所得ではなく事業所得が発生すると考えられます。

上記のように事業所得(又は雑所得)が発生するとしても、宅地の造成に着手した時期又は反復継続的譲渡を開始した場合までの資産の増加益は値上がり益(キャピタルゲイン)であるから、この場合の譲渡益の中には、譲渡所得と事業所得(又は雑所得)の両方が含まれていると考えられます。

このような場合には、その全体を事業所得(又は雑所得)として課税するのではなく、譲渡所得と事業所得(又は雑所得)とに分けて課税すべきであるとされています(二重利得法、松山地裁平成3年4月18日判決)。