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高齢者医療、負担は誰に 2009年11月30日

後期高齢者医療制度は廃止の方向
75歳以上の高年齢者を対象に2008年4月に始まった「後期高齢者医療制度」は、対象となる患者に掛った医療費について、原則本人負担は1割で残り9割のうち5割は国税や地方税が拠出し、4割は74歳以下の人達が加入する健康保険が拠出しています。
この制度は導入当初から厚労省の準備不足もあり、「高齢者差別である」とか、「保険料が高くなるのでは?」とか、年金から保険料を天引きされる事などで不満が多く寄せられました。
当時の与党も保険料軽減等の措置は講じたものの、この制度に不満を持つ人達は多くいるようです。
一方、新政権ではこの制度の廃止を表明しています。

地域医療保険で一元的に運用
政権公約によると、現在存在する各々の健康保険制度を段階的に統合していく方針を掲げています。
年齢によって差別をしない、また地域間格差や健康保険組合等と国民健康保険の負担の不公平を是正するとして、会社員等が加入する健康保険と市区町村が運営する国民健康保険を統合し、地域保険として一元化するとしています。

反発はどちらからも必至か
一元化については、健康保険組合等からは、職域毎に運営され、従業員の福利・厚生を担い、医療費の節減に取り組んできたという自負もあり、国保との統合で保険料の引き上げや福利・厚生の縮小につながる事もあるのではとの警戒感も示されています。
また、市区町村でも一旦国保から切り離した75歳以上の方々の医療制度を国保に戻すと、負担増になるという反発も考えられます。
廃止に伴う国保の負担増は国が負担するとはしているものの、07年の国民医療費は34兆円で、このうち75歳以上の方の割合は3割を占めています。
現行のままでも国民医療費は毎年1兆円増えるとされています。
制度廃止は2012年の予定とされていますが税負担の拡大も懸念されることから、どのような制度が国民のためになるのか医療制度を再編するのも難しい問題でしょう。




有償減資の効力 2009年11月27日

減資には有償減資と無償減資がありますが、無償減資の場合には、減資資本金がその他資本剰余金に振り変わるだけで、法人税法上、資本金等の額(資本金+資本剰余金)は不変です。
結果、法人県民税及び市民税における「均等割額」は、資本金を減額しても当初のまま不変です。
資本金等の額を減ずる方法としては、「有償減資」と「自己株式の取得」があります。
資本金が大で債務超過の会社にとっては、均等割額の負担はできるだけ回避したいところです。

債務超過の会社の有償減資の手続
会社法では、有償減資は、あくまで「資本金の減少手続き」と「剰余金の配当手続」がセットです。
まず、株主総会で資本金の減資の決議をし、債権者異議催告手続が終了すると、減資の効力が発生します。
資本金××/その他資本剰余金××
次に、その他資本剰余金を配当原資として、総会で剰余金の配当の決議をしますが、債務超過のため配当金は未払いとします。
その他資本剰余金××/未払金××
この場合、債務超過ですので利益積立金(剰余金)はなく、税務上の「みなし配当」課税はありません。
これで、有償減資による「資本金等の額」の減額は完了です。
なお、この未払金ですが、株主にとっては回収困難な債権ですので、当該債権を会社に現物出資します(「債務の株式化です」)。
もちろん、債権(未払金)の評価は、回収可能性で判断しなければなりませんので、その価額は1円とします。
未払金××/資本金 1円
      債務免除益××
この債務免除益ですが、一定の場合を除き、法人税の課税対象になりますが、7年以内の欠損金の範囲内であれば無税です。

会社法上の大きな障壁
会社法上、剰余金の配当には財源規制があります。
当然、債務超過会社には「分配可能利益」は存在しません。
ここが有償減資実施上の大きな障壁です。
また、法人税法における「一般に公正妥当と認められる会計基準」への準拠にも疑義があります。
しかし、債務超過会社にとって、上記のような処理及び手続は、会社を取り巻く利害関係人を害するとは思えませんし、また、課税上の弊害があるようにも思われません。
むしろ、会社の実体に即した均等割額の課税を考慮すべきと思います。




配偶者控除を考える 2009年11月26日

民主党政権の「控除から手当へ」の転換による子ども手当創設に伴い、廃止される予定の配偶者控除ですが、子どものいない専業主婦世帯では負担が増えるということで賛否あります。
そもそも、配偶者控除とは、どのようなものでしょうか?

創設の経緯
配偶者控除は、事業所得者が家族従業員に支払う給料を必要経費に算入することとのバランスから、サラリーマン世帯の妻が家事育児など家庭において夫を助けるといった内助の功を評価するという立法趣旨のもと、1961年に創設されました。
そのため、青色申告専従者給与の受給者や事業専従者は控除対象配偶者になることはできません。

不合理な規定
サラリーマンの場合、妻のパート年収が103万円以下であれば配偶者控除を受けられるのに対し、個人事業主の場合、妻への給料支給額が103万円以下でも、配偶者控除を受けられません。
個人事業主の妻も、夫の事業に従事した上で家事を行っているのが普通だと思います。
サラリーマンの妻や専業主婦の家事のみを内助の功として評価するのは、明らかに不合理です。

内縁の妻は?
所得税法は、民法の規定による配偶者と限定していますので、社会保険の扶養に入っていたり、家族手当の支給対象になっていたとしても、内縁の妻は控除対象配偶者にはできません。
これも不合理と言えます。

一夫多妻の場合は?
アフリカなどの一部の国では一夫多妻制を認めています。
日本では、婚姻の成立は各当事者の本国法によることとされているので、一夫多妻は法的に認められます。
では、配偶者控除を38万×妻の人数分受けられるかというとそうではありません。
なぜなら、所得税法では、控除対象配偶者を「有する場合」には38万円を控除すると規定されているからです。
ちなみに、扶養控除の場合は、扶養親族一人につき38万円を控除すると規定されています。




最大の変革項目は贈与税 2009年11月25日

来年度予算編成に伴う税制改正大綱づくりがいよいよ本格化してきました。
税制も革命的な大変革をとげるのでしょうか。

予測のための公開資料では
民主党はマニュフェストをさらに具体化した「政策集 INDEX 2009」を公表しておりますので、それをつぶさに読んでみると、大きな変革項目が沢山ありますが、中でも質的に最も大きな変革とならざるを得ない改正項目は贈与税です。
そのまま実行されたら天地逆転のような改正になります。

遺産課税方式採用の連鎖
INDEX 2009では「贈与税のあり方も見直します」と書かれているだけなので、見直しの内容は不明です。
しかし、贈与税は相続税の補完税であり、相続税のあり方が変わると自ずと変わらざるを得ないものです。
現行相続税は、相続人に課税する遺産取得者課税制度なので、贈与税についても贈与を受けた人に課税する受贈者課税制度になっています。
INDEX 2009は、相続税について「遺産課税方式」への転換を唱っています。
遺産課税というのは、遺産取得者ではなく、遺産そのものに課税する方式です。

アメリカの相続・贈与税・譲渡税
アメリカの相続税は遺産課税で贈与税は贈与者課税です。
また、相続財産は死亡時に被相続人が相続人に譲渡したような扱いになり、相続人が取得する相続財産に付せられる取得価額は相続時の時価となります。
日本では、相続取得財産には相続税が課せられたとしても、それを売却するときの取得価額は被相続人の取得価額とされているので、相続による時価課税と売却による時価課税という2回課税がされることになっています。

自覚されている気配はなさそうだが
民主党がなぜ遺産課税を唱えるのか不明ですが、2008/12/24公表の「税制抜本改革アクションプログラム」によると、「格差拡大抑制策として相続財産の一部を相続人からではなく遺産そのものから社会還元させることが適当」としています。




「ふるさと納税」について 2009年11月24日

1.ふるさと納税とは
「ふるさと納税」とは、都道府県や市町村に5,000円を超える一定の金額の寄付した場合に、所得税や住民税の納税額から控除してくれるという制度です。
「納税」とうたっていますが、手続き上は各自治体に寄付をして、その寄付を所得から控除してもらうという考え方に基づいています。
したがって、例えば年末調整の対象者が「ふるさと納税」による税金の控除を受けるためには、年末調整とは別に確定申告もすることになります。

2.ふるさと納税のしくみ
「ふるさと納税」をするためには、以下の手順に従って各自治体に寄付を行います。
①「ふるさと納税」をしたい自治体から所定の寄付金の用紙を取り寄せます。
②その請求した用紙を使い、寄付金を金融機関から振込みます。
③自治体から領収書が送られてきます。
④その領収書を確定申告書に添付して税務署に確定申告書を提出します。

3. 「ふるさと納税」は寄付金控除として確定申告書で計算されます。
所得税の計算上、寄付金は支出した寄付金について足切り5,000円を差し引いた残りの金額が所得から控除されます。また、所得の40%を超える寄付をした場合には、その金額で控除対象額が打ち切りとなります。したがって、寄付をした金額が全額所得税から差し引かれるわけではありません。
「ふるさと納税」した寄付金は、所得税、住民税それぞれから控除されますが、その額は各人によって税率が違うので一概には言えず、控除が一番多い方でも足切額の5,000円は自己負担分として残ることになります。

4.特典つき「ふるさと納税」
「ふるさと納税」をする自治体は複数でもかまいません。自分にとって何の縁もゆかりもない自治体であっても寄付をすることができます。
さらに自治体の中には、寄付を募るために地元の特産品を配るというサービスを行っているところもあるようです。ぜひご出身の他にもいろいろな自治体のホームページをのぞいて見て下さい。




少子化に歯止めはかかるか?子ども手当 2009年11月20日

09年、合計特殊出生率 1.37
日本の出生率の減少は再び始まり、政府発表では2009年上半期の出生数は前年同期比1万1008人減少の53万8,369人で、08年に出生率が少し回復したものの、今年は減少に転じています。
新政権は子ども手当の支給や保育所の整備で少子化に歯止めをかけたい、又、直接給付により個人消費も喚起したいと考えているようです。
人口維持に必要な出生率は2.08といわれており、その対策は急務といえましょう。

財源の確保が最重要課題
政権公約の目玉でもあった子ども手当は、15歳以下の子どもに一律月2万6千円を支給(2010年は1万3千円)するというものですが、まず問題は財源の確保でしょう。
子ども手当を対象全世帯に支給した場合、国庫負担金は5.3兆円必要といわれています。
これは、防衛関連費(4.8兆円)を上回る財政支出です。
現在の児童手当は所得制限があり今回の案より支給額も低いのですが、それでも09年予算では1兆160億円とされており、今後財源確保の継続性が問題となるところでしょう。
新政権では無駄な予算の削減、特別会計の「埋蔵金」などに財源を求め、さらに児童手当や所得税の配偶者控除や扶養控除の廃止を表明しています。
これら控除の廃止がなされた場合、共働き世帯では影響は少ないものの、専業主婦世帯では子どもがいなかったり、又、子どもの年齢によっても収入が減る事になるでしょう。

政権内で意見の調整 所得制限
連立政権の間でも所得制限についてそれぞれ意見があり、調整を計っているようです。
所得制限なしで支給する案や制限をしたり、支給額をおさえて浮いた予算を保育施設の増設等に当てたらというような案もあるようです。
家計の所得減少や男女共同参画の進展で、子どもを保育所に預けて働きたい親が増えており、総合的な育児支援ということなら手当にとどまらず、子どもを産んでも安心して育てられる、雇用情況の改善や育児環境の整備も待たれるところです。




利子ゼロの住宅ローン 2009年11月19日

預金連動型住宅ローン
銀行ローン残高のうち同銀行にある普通預金口座の残高と同額までの部分の利息を普通預金利息と同率とし、それを超える部分の利息は同銀行における一般の住宅ローン利率とするものを預金連動型住宅ローンといいます。
銀行によっては、連動普通預金はローン申込者本人名義口座のみならず、同居家族名義口座でも可としており、また、ローン利率を普通預金利率まで下げる方式と、普通預金とローンの各利率をゼロとして両利息を実質相殺する方式とがあります。

ゼロ又は1%未満利率ローンの扱い
ここで気になるのは、1%未満利率ローンの住宅借入金等特別控除の適用対象外の規定です。
しかし、この除外規定は、給与所得者がその勤務する会社から貸付けを受ける場合を対象にしており、一般の住宅ローンについてはたとえゼロ利率であっても除外の対象になりません。

利率差は銀行からの贈与?
一般的な住宅ローンの利率によって計算した利息と連動型ローン利息との差額としての経済的利益が課税対象になるかどうかも気になるところです。
しかし、これも、住宅ローン契約が、民法上の金銭消費貸借契約であり、その約定利息は当事者間の契約によって(いわゆる利息制限法や貸金業規制法に抵触しない範囲で)自由に設定することが可能とされているかぎり、個々の契約内容の違いの程度に過ぎないものなので、課税対象となる経済的利益とすることは困難です。

連動預金家族からの贈与は?
同居家族名義口座を連動対象口座にした場合、ローン利息の優遇を受けることができることから、家族間の贈与があったものとして課税関係が生じるようにも考えられます。
でも、贈与税が課税されるのは、贈与により財産を取得した場合ですから、課税できる条件にはなっていません。
ただし、住宅ローンの支払利息と家族名義連動対象口座の受取利子が相殺される場合には、「債務の代位弁済」と見る余地がありますので、みなし贈与には当たります。
本人の預金以外の利子との相殺契約だけは避けるべきでしょう。




債権回収方法としての商品引き揚げ 2009年11月18日

代金未払の自社商品の引き揚げ
自社商品を掛け売りしたが、支払期日が来ても支払がなく、問い詰めても「もうちょっと待ってくれ」と全くのれんに腕押し。
そうこうするうちに、売掛先の業績が悪く、倒産の噂も聞こえてきた。
他方、自社商品が一定期間は倉庫に保管されていることも分かっている。
そのような場合に、訴訟や差押えといった法的措置によらない、手っ取り早い方法は、自社商品を管理する倉庫等を訪れ、自社商品を引き揚げるという方法です。

「うちの商品を引き揚げて何が悪い?」
ここで注意すべき点は、窃盗罪という勇み足にならないようにすることです。
もっとも、自社の商品を引き揚げてなぜ窃盗なのかという疑問が出てくるかもしれません。
代金の完済までは所有権を留保するという契約ならば、ますますそういう思いに駆られるかも知れません。
しかし、窃盗罪が処罰する行為は、一言で言えば「相手の占有を奪う行為」で、所有権を侵害する行為ではありません。
仮に所有権が手許に残っていても、相手方が事実上その物を支配する状態、つまり、占有状態がある場合には相手方の意思に反して奪い返すことはできないのです。

相手からの了承を取り付ける
したがって、商品の引き揚げにあたっては、担当者に簡潔に用件を伝え、了承を得てこれを実行すればよいことになります。
そして、引き揚げた商品の処理としては、赤伝を切ってもらうこと、つまり、商品売買の合意解除をします。
あるいは、未払代金債務の代物弁済として処理することでもよいでしょう。

管理者がいなかった場合は? 
これに対し、担当者がいない場合、明確に拒否された場合、鍵が掛かって入れない場合には、商品の引き揚げは断念せざるを得ません。




エコカー減税のおさらい 2009年11月17日

1.制度の概要
①エコカー減税(環境対応車普及促進税制)
適用期間 平成21年4月から3年間
<適用要件>
排出ガス規制・燃費基準などについて環境に配慮した自動車(ハイブリッド車等)を新車で購入した場合「重量税」と「取得税」が2年間優遇されます。

②新車購入補助制度
適用期間 平成21年4月10日から平成22年3月31日まで
<適用要件>
上記内容の排出ガス規制と燃料基準をクリアした自動車を新車で購入した場合、10万円の補助金が交付されます。

③廃車を伴う新車購入補助金
新車登録から13年を経過した自動車を廃車して一定の燃費基準を達成した新車に買い換える場合、上記の補助金に代えて25万円の補助金を受けることができます。

2.税務上の注意点
上記補助金を法人が受けた場合には法人税の課税される収入となります。
また圧縮記帳の方法により車両購入金額の一部を損金に算入することもできます。

3.親子会社での適用
購入補助金はトラックやバス等の大型車でも適用があります。
例えば12トンクラスの環境対応について一定の要件を満たすトラックを新車で購入した場合、90万円の補助金が交付されます。
また上記車両の購入と車齢13年超のトラックの廃車をセットで行うと倍額の180万円の補助金が支給されます。

そしてこの購入と廃車のセットは100%の親子会社や孫会社、持株会社間であれば、廃車する会社と購入する会社が別会社であっても、使用者が同一とみなされて補助金を受けることができます。
この場合、購入会社は環境対応車両を購入して180万円の補助金を受け取り、廃車会社は除却損を計上することになりますので、補助金のうち90万円が廃車会社から購入会社への利益供与になりそうですが、両社が適切な経理処理を行っていれば寄付金課税の対象とならないことが確認されています。




売上の割に儲からないのはどんな業種? 2009年11月16日

社員40名の外科手術顕微鏡等製造業H社は、従来から積み重ねてきた望遠鏡製造の要素技術・レンズの焦点合わせ、メカのつくりこみなどを組み合わせて、他社に真似が出来ない製品を生み出して販売し、利益を得る体質を作りあげています。
つまり、独自の製品開発が同社の5%を超える売上高経常利益率を支えているのです。

売上高経常利益率をチェックする
「売上高経常利益率(%)=経常利益/売上高」は企業が、存続・発展するために適正な利益が得られているかどうかを示す指標で、本業と財務基盤を含めた総合的な収益力を示す数値です。

中小企業約80万社の財務データを分析した中小企業庁の「中小企業の財務指標2005年決算期)」によれば「売上高経常利益率」の業種別平均値は次の通りとなっています。
【業種別売上高経常利益率(平均)】
建設業:0.9
製造業:1.7
情報通信業:1.6
運輸業:1.1
卸売業:0.8
小売業:0.3
不動産業:4.1
飲食・宿泊業:0.2
サービス業:1.3

自社の「売上高経常利益率」が低いと感じたら、収益低迷の原因を探して手を打つ必要があります。
その方法として「売上高総利益率」の変化をチェックしましょう。
この数値が低い場合、低い販売単価、相対的に高い売上原価などがその原因であり、商品力のチェックやコストダウン対策が必要です。
「売上高総利益率」は低くないにもかかわらず、「売上高経常利益率」が低い場合は「販売費・一般管理費・支払利息」などの経費による高コスト体質が考えられますから不要不急な経費の削減などを検討する必要があります。




支払事実による医療費控除 2009年11月13日

療養上の世話の対価
療養上の世話を受けるため家政婦さんなどに支払ったときは、医療費控除の対象となります。
親族に対しての支払いはどうでしょうか。

国税不服審判所の裁決
平成9年5月16日の裁決では、親族に対して療養上の世話の対価を支払ったとしても、家族介護費についてはそもそも医療費控除の適用はないとの税務署側主張を無視し、支払の事実の有無のみを問題にしていました。
現実の支払の事実が認められれば医療費控除の適用がありそうにも読める裁決でした。

従来の解説
税の解説書では、療養の対価として付添え人に支払うものは医療費控除の対象となるが、感謝の気持ちの謝礼は対価ではないから対象外としています。
そして「家族介護への謝礼は労務の提供への対価の性質をもつものではないから、医療費控除の対象とならない」としています。

対価として親族に支払う
従来の行政側の見解を整理してみると、療養上の世話への費用が医療費控除の対象となるか否かのポイントは「事前に労務の提供の対価としての支払いの約束をした上で、労務の提供がなされ、現実に支払いを履行している」という事実があるかどうか、にあるといえそうです。

家族に優しい税制へ
納税者サイドでも、制度への配慮を施しながら、行政の許容枠を拡げる姿勢があるとよいのかもしれません。
なお、対価の受け取り側は所得を得たことになりますから、場合によっては所得税の申告をしなければなりません。
というよりも、積極的に所得申告することにより、医療費支払事実の裏付けとすべきでしょう。




家族介護への税制配慮 2009年11月12日

市区町村の家族介護者支援手当
介護保険法で一定の要介護者として認定を受けている在宅要介護者を介護している同居家族に対して、「家族介護者支援手当」を支給する条例を制定している市区町村が増えています。
この家族介護者支援手当の受給該当者には、自治体により異なりますが、要介護の認定の程度に応じ、何万円かの金額が毎月支給されます。

介護保険法上の税制措置では扱えない
介護保険法では、保険給付として支給を受けた金品に対して租税その他の公課を課することができないものとしています。
なお、介護保険制度においては、市町村の判断で、介護保険法で定められたサービス以外のサービスを保険サービスに加えたり、居宅サービス等の区分支給限度額を引き上げたり、介護者の支援や、介護予防事業等の「保健福祉事業」を制度内で実施してもいます。
しかし、家族介護者支援手当は
①金銭で支給されるものであること
②要介護者以外の者に支給されるもの
であるから、介護保険法上非課税とされる保険給付や市町村特別給付に該当しません。

市区町村からの照会への非課税回答
市区町村としては、給付した金銭に課税されたのでは給付の効果が限定的になってしまうので、非課税扱いにできる方途がないか国税当局に問い合わせしたところ、非課税でよいとの回答を得ています。
公表されてはいないのですが、情報公開法による開示情報で明らかにされました。
家族介護者支援手当を非課税とすることに特に根拠を見出せなかったのか、奥の手として、継続需給にもかかわらず、「災害等の見舞金で、その金額が社会通念上相当と認められるもの」に該当し、非課税所得として取り扱うのが相当である、との理由を示しました。

家族が崩壊し、個族化が進行している時代に、家族の助け合いを回復する方向への制度的支援は促進されるべきです。




これって価格統制? 2009年11月11日

禁止例示項目
・顧客誘引のための安売り商品として使用してはならない。
・安売りによって競争相手の顧客を獲得してはならない。
・パイの拡大が困難であるから業界内で協調して生産調整をすべきである。
・競争は業務効率化の面のみでおこなうべきで1個たりとも損切りのような売り方をしてはならない。
・シェア拡大を目論み、採算を度外視した販売戦略を取ると、その地域での価格競争が激化し、競合者の業績に多大な影響を与えるから、禁じられるべきである。
・大口取引先に対し他よりも多くのリベートを与えることはしてはならない。
・特売を行うために、継続取引業者に対し協力値引きを要請する事はしてはならない。

いつのこと、何の事でしょうか?
上のようなことが民間大手や官庁主導でなされているとしたら、途上国とか昔とか言うならいざしらず、今だったら公正取引委員会が動き出しマスコミも非難轟々の取り上げ方をするはずと思われます。
しかし、どういうわけか上記の項目の指導をしていると堂々とインターネットで公表しているところがあります。
「酒類の取引状況等実態調査」を公表した日本の国税庁です。

どういう理由で
先の禁止項目は「酒類に関する公正な取引のための指針」というものに基づくもので、そこでは合理的価格として「売上原価+販売費・一般管理費等+利潤」との算式を示し、これを短期的にも長期的にも維持
すべきものとしています。
そんなことが保証されているのなら誰も苦労しないのであって、相変わらずの護送船団意識を感じます。

事態は乱れている
「実態調査」では1,215 ヶ所を調査しており、うち96%が指針に抵触していて国税庁は指針違反として改善指導したとしています。
その上「不当競争是正の指導をしたとの報告を公正取引委員会にした」としています。
しかし、由々しきは税収確保の名分で業界統制のために市場原理を犯し、逆に独禁法にも触れそうなことを官庁が相変わらずやっていることの方に思われます。




貸倒れとは・・・ 2009年11月10日

1.貸倒れとは・・・
取引先の倒産などによって,売掛金や受取手形、貸付金その他の債権の一部または全部が回収できなくなってしまった場合には、回収できなくなった金額を貸倒損失として費用に計上することができます。
しかし、回収不能になったからといって無条件で経費にできるわけではありません。
法人税上、損金に算入するためには大きく分けて次の3つ要件があります。

2.貸倒損失の損金算入要件
①法律上の貸倒れ
会社更生法の更生計画の認可決定があった場合など、法律上債権が消滅した場合
②事実上の貸倒れ
法律上は債権が消滅していないが、全額回収できないことが明らかな場合
③形式上の貸倒れ
継続的な取引先に対する売掛金に限定して、一定期間取引停止後弁済がない場合等

3.形式上の貸倒れ
上記の①は相手先からの通知などにより確認できますが、②については事実認定が難しい場合が多く、一般的に適用が困難な要件となります。
したがって、多くの場合は③の要件を満たすかどうかとなります。
例えば
○相手先に何度も請求書を発行しているが、いつまでたっても入金してもらえない
○相手先が行方不明になってしまい請求書を出しても戻ってきてしまう
などで取引停止後(最終入金後)1年以上経過している場合には、上記③のケースにあてはまり、備忘価額1円を残して「貸倒損失」として経費に計上することができます。
また、このような場合に備えて日ごろから、「再請求の日付を記録する」ことや「転居先不明で返送されてきた封筒を保管しておく」ということで、取引停止の日を証明できることになると思います。

4.形式上の貸倒れの注意点
この処理はあくまでも売掛金のみに適用できるもので、貸付金等その他の債権には適用できません。また、数年後に前ぶれもなく入金があった場合には、その事業年度の収入に計上しなければなりませんのでご注意ください。




支払った消費税が全額控除できない場合も? 2009年11月09日

消費税の課税売上割合が95%未満となった場合は仕入控除税額が制限される消費税の申告にあたり原則課税方式を選択している場合は、課税売上割合(課税売上と非課税売上の合計に占める課税売上の割合)が95%以上であれば、支払った
消費税は、受取った消費税から全額控除することができます。
ところが土地や株式の売却・土地や住宅の賃貸収入などがあった場合には、非課税売上が増えて課税売上割合が95%未満となることがあります。
この場合には、全額控除することが認められず、課税売上高に対応する課税仕入税額を別途算出し控除しなければなりません。
この算出方式には、個別対応方式と一括比例配分方式とがあります。

控除方式には2種類ある
(1)個別対応方式
課税売上に対応する仕入税額と課税非課税共通の仕入税額のうち課税売上割合相当額の合計額をもって控除対象仕入税額とする方式です。

(2)一括比例配分方式
課税仕入税額の合計額のうち課税売上割合に相当する額のみ控除対象仕入税額とする方式です。

一括比例配分方式と個別対応方式とどちらが有利?
一般的に、非課税売上に対応する課税仕入が多く発生する場合には、一括比例配分方式を選択した方が有利です。
一方、課税売上に対応する課税仕入が多く発生する場合には、個別対応方式を選択した方が有利です。

選択は申告書提出時までに行えばよい?
消費税の申告書提出時までに、いずれか有利な方式を選択することが可能です。
但し一括比例配分方式を選択した場合、2年間継続適用しなければなりません。
事務処理が煩雑になることもある個別対応方式は、取引ごとに課税仕入を課税売上対応、非課税売上対応、課税非課税共通対応の3つに区別して経理することが必要ですので、日常の事務処理が煩雑になる場合があります。




ドイツと日本の税モラル 2009年11月06日

税のモラル分析
ドイツ連邦財務省のホームページに、「税のモラル」の国際分析が掲載されています。
「脱税はいかなる場合にもしてはいけないことである」と考える人の割合によって、税のモラル度を測定し分析比較しています。

分析の結果
○他の納税者の行動を信頼している人ほどモラルが高い
○政府を信頼している人ほどモラルが高い
○宗教を大切に思う人ほどモラルが高い
「他の納税者は皆正しく納税している」と考えている人々ほど脱税に対する見方が厳しく、税のモラルを高くしています。
他の納税者に対する信頼と同じことが政府に対しても言えるようです。
ほぼすべての国において政府を信頼していない人々よりも、政府を信頼している人々の方が脱税に対して厳しい見方をする傾向にあり、10~20%程度高くなっています。
宗教を大切にしているグループとそうでないグループでは、脱税に対する見方が大きく異なっているようで、宗教を大切だと考えないグループよりも、宗教を大切にしているグループにおいては25%以上高くな
っています。

「税のモラル度」最高の国は?
独財務省HPが最も税のモラルが高い国として報告しているのは、日本だそうです。
税のモラル度は、主要先進国中日本が突出して高く、日本人の80%以上の人が「脱税はいかなる場合にもしてはいけない」と考えているといっています。
ちなみに、ドイツではそのように考える人の割合は60%弱となっています。

分析の結果と関係ないのでは
日本が税モラル最高の国だということを信じたとして、それでは「欧米の国々で確認される高い税モラルの基礎指標が、日本でも確認できるのか」というと、それは大変疑問です。




日独の税金裁判事情 2009年11月05日

「税のモラル度」最高の国独財務省HPによると日本は「脱税はいかなる場合にもしてはいけない」と考える人の割合の世界一高い税モラル国であるようです。
税モラル先進国だからなのか、日本では税金訴訟は多くありません。
「世界の税金裁判」という本によると、1999年のドイツの税務訴訟数は70,990件であるのに対して、日本は232件となっています。
因みに人口比は日本が1.5 倍です。
この顕著な差は何を意味しているのでしょうか。
税モラルの差としては説明がつきそうにありません。

訴訟以前の係争数と救済率は?
税金裁判になる前に、行政不服審査の申し立てがなされているのですが、ドイツでは税金裁判数の約10倍の異議申し立てがなされ、そのうちの約8割が救済されています。
日本でも異議申し立ての数は、税金裁判の約20倍ありますが、納税者の主張が認められるのはそのうち1%です。
部分的に税務署処分を自ら修正するものを含めても救済率は1割ぐらいしかありません。

裁判での救済率は?
ドイツでは、行政救済は8 割で、残りの2 割のうちの半分が裁判になり、裁判での納税者の救済率は完全救済が1 割、一部救済が1 割といったところです。
日本では、1%行政救済のあと、訴訟に至るのは5%で、そのうち裁判での完全救済が3%、一部救済が3%といったところです。
日本では、行政と司法が一体となって国民の反旗からの国の税制を守っています。
国に異議を唱える人は限りなく少なく、異議を唱えても3%か5%ぐらいしか救済されず、徒手空拳の虚しさを覚えつつ沈黙させられています。

「税のモラル」の中身と関係あるか
裁判所は正義の判断をするところという幻想、裁判の敗者は税金逃れをした悪人との連想、国は間違いをしないとの先入観、圧倒的多数の国民は税金の申告をしないですむ税制、税をめぐる争いは泥棒や交通事
故に遭うことより縁の薄い事件であること、などなどが日本の税モラルの中身のように思われます。
「税のモラル」先進国というのは、我が国の場合、誇れないことなのかもしれません。




年末調整とは 2009年11月04日

1.年末調整とは
年末調整とは1年間に支払った毎月の給料等と天引きした源泉徴収額について、本年最後の給料後に改めて1年分の正しい税金を計算することで、それまでに天引きされた税金との過不足を調整する手続きを言います。

2.年末調整が必要な方
①1年を通して同じ会社に勤められた方(パート・アルバイトを含む)
②期の途中で就職された方
→退職した時に交付された前職の21年分の源泉徴収票が必要です。
③年の途中で海外赴任等の理由により非居住者となった方
など

3.住宅ローンの適用
年末調整では、2年目以降の住宅ローン控除についても計算を完結することができます。一般的に住宅ローン控除は、取得した人がその住宅に住み続けることが条件となりますが、その方が海外出張などで単身赴任を余儀なくされる場合などは、その生計を一にする親族が住み続ければ控除の対象となります。

4.配偶者・扶養控除の注意点
配偶者や扶養者の控除の適用には、控除の対象となる配偶者・扶養者に収入の制限がありますので注意が必要です。
扶養の対象者とは、経済的な支援によって生活している人です。
したがって、同居・別居を問わず、子供や両親など、生活を支えている親族がいる場合には控除を適用することができます。
したがって例えば、海外に留学している子供に仕送りをしている場合には扶養控除を適用できますが、年金生活をしている田舎の両親に不定期に仕送りをしている場合には控除の対象にはなりません。

 先日の新聞紙面によりますと、政府税制調査会は扶養控除、特に16-22歳の年齢に対する特定扶養控除を縮小・廃止する考えがあることを示しました。
翌年以降、扶養控除については大きな削減があるかもしれません。今後の動向が気になります。